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「武器と市民社会」研究会

2007年5月に設立された「武器と市民社会」研究会の公式ブログです

ATT交渉会議:新草案

2012年7月ATT国連交渉会議の最終日前日となった7月26日(木)午後4時30分前後、修正版の条約草案が配布されました。PDFの形にして、Scribdにアップロードいたしました。

24日(火)の草案配布以降、様々な議論が行われました。その中で、交渉参加国は、ATT推進諸国が2つに分かれ、消極国も2つに分かれることで、主に4グループに分かれました

● 2006年、2008年、2009年国連総会ATT決議に賛成した国々は、概して以下の2グループに分かれました。

1) 「有志国(like-minded states)」グループ
ノルウェー、メキシコ、ドイツ、スウェーデン、CARICOM諸国、アフリカの国々の多くは、先週20日(金)の74か国声明(先週の記事参照)に合意した国々は、その後の公開・非公開の交渉のなかで、24日草案の文言を強めようと交渉してきました。このグループのなかでは、もし最終的な条約が弱い文言の場合、国連総会での決議によってより厳しい規制内容の条約を採択するなどの「プランB」に移るといった方法も検討されていました。

24日の会議場で、マリは草案の規制は弱いと指摘しました。リベリアは草案は「可能な範囲で」、「適切な」、「必要な場合は」といった文言の多さを指摘しました。
リヒテンシュタインは、第2条B2(他国領土内の自国軍への武器移転は基本的に規制対象外)、第6条2(締約国の防衛協力合意上の契約義務には影響しない)、第23条(非締約国との関係)など、草案は抜け道だらけだとして、草案はほぼ全てのことを各国の裁量にゆだねていると述べました。ニュージーランドは、第2条A4(規制する兵器リストは各国の裁量であり、かつ必ずしも規制リストを公開しなくてもよい)、第3条3(ジェノサイドや人道に対する罪を助長する「目的のために(for the purpose of)」武器を移転することを禁止=リスクがある程度では禁止されない)、第4条(移転した武器が流出/迂回する可能性等があっても、輸出許可をしてはいけないという義務はない)、第17条1(発効条件は65か国の批准等)などの抜け道を指摘しました。ウルグアイも、ジェノサイトや人道に対する罪に関する文言は弱いとして、上記の「目的のために(for the purpose of)」という文言の削除を求めました。
ノルウェー、スイス、ドイツは、国連軍備登録制度の7カテゴリー(重兵器のなかでも限定的)ではなく全ての重兵器を含めた全通常兵器を規制することを求めました。メキシコは、通常兵器のなかで何を規制対象リストに含めるのかが、結局各国の裁量にゆだねられることに懸念を示しました。トリニダード・トバゴは、発効条件の65か国は多すぎると述べました。

2) 原共同提案国+フランス、アメリカ
「原共同提案国」グループ(イギリス、オーストラリア、日本、フィンランドなど)は、従来は厳格な内容のATTを支持していましたが、74か国声明に署名せず、国連安保理常任理事国のうちのいわゆるP3に入るフランスアメリカとともに、24日(火)草案をベースにした妥協案に合意する方向で議論をしていました。

このグループ、とりわけアメリカイギリスは、1)の「有志国」グループのなかの、カリブ諸国などの小国やメキシコなどに対して、例えば弾薬を規制対象外にすることについて納得するように、圧力や交渉を重ねていました。一方で、アメリカは、弾薬について若干であれば妥協する姿勢を見せていました。オーストラリアはATTの規制対象に弾薬を含めないことについて25日の会議場で理解を示すなど、アメリカに譲歩する姿勢を示しました。日本は、この「原共同提案国」グループのなかにいます。ただし、このグループのなかでも、フランスケニアは、24日の会議場で、24日草案の文言を強めるべきという趣旨の発言をしていました。フランスは、移転許可基準における国際人権法や国際人道法の項目を強化すべきと主張し、ケニアは弾薬を規制対象にすべきと主張し、第2条A1(h)に、「小型武器・軽兵器」とともに弾薬(munitions and ammunitions)を書きこんではどうかと提案しました。
アメリカは、妥協を重ねた結果の条約案であれば、7月27日の「コンセンサス」採択をブロックすることはないかもしれないと言われています。しかし、それで7月に条約が採択されたとしても、アメリカが条約に署名・批准するかどうかという問題は残ります。

● 2006年、2008年、2009年国連総会ATT決議に棄権した国々をはじめ、ATTに消極的であった国々は、概して以下の2グループに分かれました。

3) ロシア、中国、インドなど
これらの国々は、24日草案発表の前にも、文言を弱めようと交渉していました。そして、24日から本日までも、24日草案の文言を維持する、あるいはさらに弱めるよう、主に2)のアメリカ、イギリス、オーストラリアをはじめとした、安保理常任理事国・原共同提案国グループとの交渉を繰り返しました。

例えば、中国は、贈与(譲渡)や貸与などを条約の規制適用外にすることなどを強く求めました。24日草案では、この意見が反映されています。また、中国は、国際人権法や国際人道法に関する移転許可基準に関しては中国は「柔軟性(flexibility)」を示したとして、内政不干渉に関する文言を盛り込むように求めました。インドは、24日草案第6条2の後半部分の挿入を主張しました。先日の記事のとおり、24日草案第6条2では、この条約は締約国の防衛協力合意(defense cooperation agreements)のもとでの契約義務を無効にするものではない、とされており、国際人権法の重大な違反(serious violations)の遂行に使用されることが分かっていたとしても、締約国の防衛協力合意上の契約義務であれば、武器を移転できるという解釈も可能です。24日以降の交渉のなかでも、インドは、この項目の維持(ないし若干の文言修正のうえでの維持)を主張しました。武器の主要輸出国のなかでも1)の有志国グル―プに入っているドイツは、武器の製造や維持等の技術(24日草案では規制対象外)を規制対象に戻そうとしましたが、インドが強く反対しました。
このグループの国々は、7月27日の段階で、条約案の「コンセンサス」での採択をブロックすることはないかもしれないと言われています。しかし、7月27日に実際に採択されたとしても、これらの国々が条約に署名・批准するかどうかという問題は残ります。

4) 強硬反対国
2006年以降の国連プロセスのなかで、ATTの形成そのものに反対してきたアルジェリア、イラン、エジプト、キューバ、シリア、朝鮮民主主義人民共和国など。これらの国々が7月27日の条約採択にあたりどうするのかについては、会場でも様々な憶測がありますが、明確ではありません。

NGOや国際法学者なども含めて、現在、この草案の分析を行っているところです。分析の掲載まで、暫くお待ちください。

以上。

(作成者:夏木碧 「武器と市民社会」研究会事務局担当。2003年より、国際NGOオックスファムにて人道/軍備管理・軍縮分野を担当。ATT関連の調査・研究や国内・国際会議の企画・調整等を行う。4週間のATT交渉会議に参加している。)

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