「武器と市民社会」研究会

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ATT交渉:7月16日移転許可基準非公式文書の分析

7月9日の週の議論を経て、7月16日(月)の主要委員会1の議長が、移転許可基準についての非公式文書を配布した(こちらからScribdでダウンロード可能)。

※ 以下では、この文書の内容(以下、7月16日文書)についての分析を述べます。なお、以下の記録や分析は作成者(夏木碧)の個人的なものであり、所属団体の公式なものではありません。また、当面の情報共有のために急いで作成しましたので、文章が整っていない等の問題や、後で気づいた点については、後ほど修正・追加できましたらと思っております。

★7月16日移転許可基準文書について
全体的には、7月16日文書における移転許可基準は、7月5日の記事で解説した7月3日文書よりも、さらに対象が狭まったと言える。以下、7月16日文書について、2011年7月文書や2012年7月3日文書との比較を交えながら解説する。

【1. 削除された移転許可基準】
7月16日文書からは、2011年7月文書や2012年7月3日文書にあった移転許可基準のうち、いくつかが削除されている。
 持続可能な開発や経済的悪影響に関する移転許可基準は、7月5日の記事で解説したように、7月3日文書で文言が弱められていたが、7月16日文書では完全に削除されている。
 汚職に関する移転許可基準も、7月3日文書には含まれていたが、7月16日文書では削除された。

交渉会議の最初の2週間で、コートディヴォワール、スペイン、EU、ドイツ、フランス、スイス、ノルウェー、コスタリカ、ケニアは、開発に関する移転許可基準を含むことを強く求めていたが、イラン、マレーシア、ブラジルは反対し、韓国も懐疑的な見方を提示していた。汚職についても、コートディヴォワール、フランス、アイルランド、ガーナ、ケニア、ザンビアは、移転許可基準に含めることを支持していた。
※この2つの移転許可基準について、これまで日本は立場が不明確ないし消極的であったが、オーストラリアの移転許可基準に関する提案に、スイス、スウェーデンとともに合意することにより、これらを含めることを支持する姿勢を示していた。

7月16日文書の配布を受けて、NGOとともに、ケニア、ナイジェリア、イギリス、スイス、コスタリカ、スウェーデンなどの国々は、持続可能な開発や汚職に関する移転許可基準を挿入するよう主張している。

【2. 含まれなかった移転許可基準】
 2011年7月文書や2012年7月3日文書には、ジェンダーに基づく暴力(gender-based violence)を含めた武装暴力(armed violence)に関する移転許可基準が盛り込まれていなかった。

NGOはこの移転許可基準の挿入を求めている。交渉会議の最初の2週間で、ノルウェー、フィンランド、リトアニア、アイルランド、アイスランド、シェラレオネ、ガーナ、ガボン、サモア、リベリア、ザンビア、マラウイ、ケニア、スウェーデンは、ジェンダーに基づく暴力に関する移転許可基準の挿入を主張していた。ドミニカ共和国、ナイジェリア、スウェーデン、スイスなども、武装暴力に関する移転許可基準を支持していた。日本は、会議第2週目に、ジェンダーに基づく暴力に関する移転許可基準には合意できないことをNGOに伝えていた。

【3. 移転許可基準を適用する行為】
 7月3日文書と同様に(7月5日記事を参照)、国際人権法などの移転許可基準に照らし合わせた規制の対象は輸出だけになっている。

交渉会議の最初の2週間で、NGOとともに、フランス、ガーナ、トリニダード・トバゴ、メキシコ、CARICOMなどは、輸出以外の行為も移転許可基準をもって規制することを求めていたが、オーストラリアや日本をはじめ、ATTの形成を支持する国々のなかにも反対国が多いと言える。

【4. 移転の可否の解釈】
以下に詳説するとおり、7月3日文書と同様に(7月5日記事を参照)、移転許可基準の文言は2011年文書より曖昧であるため、どのような規制を各国がしなければならないのか明確ではなく、国際人権法や国際人道法の重大な(著しい)違反に使用される等の大きなリスクがある場合にも、移転しても良いという解釈を可能にするものになっている。

 7月16日文書では、国際人権法や国際人道法の重大な(著しい)違反(serious violations)等の移転許可基準は、「リスクアセスメント」の項目に含まれている。この項目では、例えば、「国際人権法や国際人道法の重大な(著しい)違反の遂行や助長に使用されないように、締約国は厳しいリスクアセスメント(rigorous risk assessments)を行い、軽減措置(mitigation measures)をとる、とされている。そのうえで、大きなリスクがある場合には、許可をしないという支配的な推定(overriding presumption against authorization)をする、と書かれている。このことは、例外的に許可をする可能性や、リスクを軽減しようと何らかの措置(外交努力など)を行えばよしと解釈される可能性を含んでいる。

この「軽減措置」や「許可をしないという支配的な推定」といった文言については、7月17日の主要委員会で、メキシコ、アイルランド、スイス、日本、スウェーデンをはじめ、ATTの形成を支持している国々の多くが、より明確な文言(許可をしない:shall not authoriseなど)にすることを求めた。NGOも、より明確な文言を求めている。

以上。7月17日(火)、実施(implementation)などについての非公式文書が配布されました。また分析して、報告いたします。

(作成者:夏木碧 「武器と市民社会」研究会事務局担当。2003年より、国際NGOオックスファムにて人道/軍備管理・軍縮分野を担当。ATT関連の調査・研究や国内・国際会議の企画・調整等を行う。4週間のATT交渉会議に参加している。)

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