「武器と市民社会」研究会

2007年5月に設立された「武器と市民社会」研究会の公式ブログです

ATT交渉:7月5日(木)から9日(金)の流れ概説

ATT国連交渉会議は、予定より遅れて、7月3日(火)夕方にやっと開幕した(いきさつは7月5日の記事でご覧ください)。この記事では、翌7月4日(水:祝日)後の7月5日(木)から7月9日(月)の流れを概説する。

【写真:7月2日(月)国連総会会議場。ここで開幕する予定であったが、結局翌日に別の建物の会議場に移ってから開幕した。撮影:夏木碧】
20120702UNATT.jpg

【1. 7月5日(木):会議の進め方をめぐる問題と主要委員会議長の決定】
開幕したとはいえ、5日(木)の本会議でも、本来は2日と3日に行われるべきであった各国声明が続き、本格的な条約交渉に入るのは遅れた。5日午前の本会議後半に、モリタン議長は、2つの主要委員会を設けて、主要委員会1は条約の前文(Preamble)、原則(Principles)、目標・目的(Goals and Objectives)と許可基準(Criteria)を検討し、主要委員会2は規制対象(Scope)、実施(implementation)と最終規定(final provisions)を検討することを提案した。

しかし、アルジェリア、イラン、キューバ、シリア、朝鮮民主主義人民共和国は、二つの主要委員会が同時進行で議論をすることに反対した。午後の本会議の各国声明の後に、モリタン議長は再び主要委員会に関して合意を得ようとした。議長は、6日(金)の2つの主要委員会については片方を非公開にして、翌週9日(月)以降の会議の進め方については後で合意する提案をした。アルジェリア、インド、キューバ、シリア、朝鮮民主主義人民共和国はこの提案にも反論を述べるなどしたが、最終的には6日(金)の進め方については合意に至った。

これに従って、翌6日(金)は、午前10時から11時までは本会議を行い、11時から午後2時までは主要委員会1(公開)が目標・目的を、主要委員会2(非公開)が規制対象を検討して、午後3時から6時までは主要委員会1(非公開)が目標・目的を、主要委員会2(公開)が規制対象を検討する、という形で進めることになった。また、主要委員会1の議長はモロッコが、主要委員会2の議長はオランダが選ばれた。

【2. 7月6日(金):主要委員会での議論(一例)】
7月6日(金)も、本会議では手続的な問題に関する議論に時間が費やされたものの、2つの主要委員会では、会議場の大きなスクリーンに空白のワード文書を表示する方法をとり、このワード文書に記入すべく各国の提案が促され、条約内容に関する議論が若干ながら進展した。この日、規制対象を検討した主要委員会2では、以下の論点を含め、多くの議論が行われた。

● 国連軍備登録制度の7カテゴリーの兵器
(注:このカテゴリーを使用することによる抜け道については、7月5日の記事中盤で説明しております
フランスは、国連軍備登録制度は、今日とは全く異なる文脈で形成されたものであることを述べ、この7カテゴリーでは抜け落ちる兵器、例えば輸送用の軍用機なども含めるためには、7月3日議長非公式文書(以下、7月3日文書)の書き方を議論のベースにすべきと述べた。メキシコも、国連軍備登録制度は「別の時代の、別の目的のため(from another age, for another end)」のものであると主張した。しかし、アルジェリアは、この7カテゴリーより広い範囲の重兵器を含めることに反対した。

●規制対象に含まれる兵器の解釈
7月5日の記事で解説したように、7月3日文書には、締約国は、この条約の規制対象に含まれると見なす(they consider)通常兵器について、規制リストを作り、維持し、公開する旨が書かれていた。これは、具体的に何を規制対象とするのか、各国が勝手に判断できることを意味していた。オーストリア、CARICOM、スイス、ナイジェリア、ニュージーランドは、この「と見なす(they consider)」という文言は問題であるとして、変えるように求めた。

●その他の論争点
・デンマークは、猟銃やスポーツ用ライフル等を規制対象に含めることを主張したが、1丁だけの場合と1000丁の場合は区別すべきと述べた。オランダは、汎用品 を規制対象にすることや、催涙ガスなども規制対象にすることを求めた。メキシコは、軍用兵器だけではなく警察用の装備品も規制対象とするべきと主張した。

このように、様々な議論があったものの、合意形成には程遠いものであったため、この日の主要委員会2の最後にワード文書に残っていたのは、「規制対象(scope)」、「アイテム(items)」、「活動(activities)」の3つの単語のみであった。

【3. 7月9日(月):主要委員会の半分が非公開に】
7月9日(月)には、午前の本会議で各国が声明を述べた後に、会議の進め方について再度議論が行われた。モリタン議長が提示した7月20日(金)までの作業計画(Programme of Work)案について合意されたが、ここでも主要委員会の片方は非公開(NGOの参加不可)とされていた。この状況について、全て公開とするべく表決に持ち込むことは、手続き上は可能であるが、そうするとエジプトなどがパレスチナの参加資格問題を再度持ち出すことが予想できた。よって、NGOの参加問題を表決にかけることはできず、結果的に主要委員会の片方が非公開な状況を変えることはできなかった。7月9日午後は、この合意に従って、前文と原則に関する主要委員会1(公開)と、実施に関する主要委員会2(非公開)が行われた。

7月9日(月)に合意された作業計画は、こちら(Scribd)でダウンロード可能。

7月9日の週の議論を経て、7月13日(金)の主要委員会2の議長(オランダ)が非公式文書を配布した。この文書の冒頭に、議論をまとめた内容が書かれていたが(後の部分は、各国の提案を羅列したのみ)、こちら(Scribd)でダウンロード可能。
※次の記事で、この文書の分析を述べる予定です。

【4. その他】
以下、7月5日(木)の本会議での各国声明について、一部を紹介する。

●規制対象(武器)
CARICOM:小型武器・軽兵器、弾薬、部品・構成部分を含めた全ての通常兵器
EU:全ての兵器、システム、部品・構成部分(小型武器を含む)
エクアドル:技術は含めるべきではない
ガイアナ:小型武器、弾薬、部品・構成部分、技術を含めた、全ての通常兵器
リヒテンシュタイン:小型武器、弾薬を含めた全ての通常兵器
コスタリカ:小型武器・弾薬を含めた全ての通常兵器
ブラジル:国連軍備登録制度の7カテゴリーと小型武器、弾薬。部品・構成部分と技術は含めるべきではない
マレーシア:国連軍備登録制度の7カテゴリーと小型武器。弾薬は含めるべきでない
フィンランド:小型武器、弾薬を含めた全ての通常兵器

●規制対象(行為)
リヒテンシュタイン:輸出、輸入、通過、積替え、ブローカリング(仲介)
コスタリカ:輸出、輸入、通過、積替、贈与、貸与、リースなど
ニュージーランド:贈与、貸与、リース、ブローカリングなど含めるべき

●移転許可基準
CARICOM:国際人権法、国際人道法、武力紛争、武装暴力
EU:国際人権法、国際人道法、紛争、安定、社会・経済開発
ケニア:国際人権法、国際人道法、持続可能な開発
ニュージーランド:国際人権法、国際人道法
コスタリカ:国際人権法、国際人道法、平和・貧困削減・社会経済的開発への悪影響
ブラジル:貧困削減、社会・経済的発展は含めるべきではない
キューバ:客観的で、透明性があり、差別的でないものにすべき
フィンランド:国際人権法、国際人道法などに加え、ジェンダーに基づく暴力に関する許可基準を含めるべき

●実施
CARICOM:事務局は独立した組織とし、検証やモニタリングの役割を与えるべき
エクアドル:ODAの中に事務局を設けるべき
キューバ:報告は自発的なものであるべき

●その他(どのような条約にすべきか、など)
CARICOM:武器の輸入、輸出、移転に関する可能な限り最高の水準の条約
アフリカ・グループ:可能な限り最高の水準の条約
EU:厳格で実効性のある条約
ケニア:高い基準を有する、厳格で包括的な条約
ニカラグア:普遍的に受容可能な条約。客観的であり、政治利用されないもの
ガイアナ:厳格で実効性のある条約。可能な限り最高の水準の条約
ブラジル:差別的(non-discriminatory)に解釈されない客観的な条約
マレーシア:何をもって条約を成功とみなすのかは各国で異なる。客観的で、透明性のあり、全ての国の立場が反映された条約であるべき

(作成者:夏木碧 「武器と市民社会」研究会事務局担当。2003年より、国際NGOオックスファムにて人道/軍備管理・軍縮分野を担当。ATT関連の調査・研究や国内・国際会議の企画・調整等を行う。4週間のATT交渉会議に参加している。)

関連記事

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://aacs.blog44.fc2.com/tb.php/83-ab3dbee6
該当の記事は見つかりませんでした。