「武器と市民社会」研究会

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シンポジウム報告: 国連・武器貿易条約(ATT)交渉の行方

2012年6月9日(土)、拓殖大学文京キャンパスにて、シンポジウム「国連・武器貿易条約(ATT)交渉の行方:武器移転規制の意義と課題」を開催いたしました。

悪天候にもかかわらず、企業、政府・自衛隊、研究者、学生、NGO・市民運動関係者など、約100名の方々にご参加いただき、盛況のうちに終了いたしました。

【セミナーの様子】
20120619Sato

【プログラム】
開会挨拶とATTの経緯説明      佐藤丙午
報告① 7月国連交渉会議の争点  夏木碧
休憩
報告② ATT交渉における日本の役割と立場    河野光浩
報告③ ATTの目標設定と普遍性の関係について  岩本誠吾
コメント・質問①   杉原浩司
コメント・質問②   森本正崇
休憩
登壇者討論
質疑応答
閉会挨拶   夏木碧

20120609Natsuki

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【報告① 7月国連交渉会議の争点 (夏木碧)レジュメより】
以下、Scribedからレジュメをダウンロードいただけます。
各争点ごとに表になっており、会議中の各国声明の内容や、(条約が採択された場合は)条約に最終的に盛り込まれた内容を、この表に沿って確認することで把握いただけます。

20120609ATTシンポジウム夏木碧レジュメ

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【報告③ ATTの目標設定と普遍性の関係について―EU共通の立場を素材として(岩本誠吾)レジュメより】

1. 国際法における武器貿易規制の前提条件
・国家の権利:自衛権用及び集団安全保障体制用の軍備保有権⇒武器貿易の原則合法性
・国家の義務:人的及び経済的資源の軍備用への転用の最小限化(国連憲章26条)

2. 通常兵器の移転に関する国際法規制
・条文による明確な禁止:レーザー兵器、探知不能AP地雷、対人地雷、クラスター弾等
・人道法違反の兵器移転の制限(移転の沈黙≠移転の自由、IHLの尊重確保義務)
・国連安保理その他の地域機関による兵器移転の禁輸措置
・他国の国際違法行為の遂行に支援・援助した国家の二次的・間接的な国際責任

3. ATT作成の前提条件
・「有志連合方式」でなく、「コンセンサス方式」(義務の厳格化VS条約の普遍性)
総会決議A/RES/64/48、会議暫定手続規則A/CONF.217/L.1
コンセンサス方式=正式な反対がない無投票で行われる議決方法≠全会一致
コンセンサス方式:「最低の共通分母」の条約文化(欠点)と採択機会の増加(利点)
・ATT第3回準備委員会でのP5声明(2011年7月12日)
コンセンサスに基づく採択、ATT≠軍縮条約、正当な武器貿易や自衛権の存在、
武器移転の決定は国家主権の行使、移転兵器の不正目的・活動への流用防止責任、
単純・簡潔・容易な履行の現実的方法はATTに従った国内立法規則による国内的履行

4. 比較対象としてEU共通の立場(2008年、2008/944/CFSP)の場合
*EU条約25条:「立場」、29条:適合確保義務(法的拘束力あり、但しEU法に非ず)
 (Council Common Position2008+Common Military List2010+User’s Guide 2009)

・範囲(Scope、品目と活動)
EU軍事リスト:小火器、軽火器、弾薬、爆弾・魚雷等、火器管制・警戒装置、軍用車両、BC暴徒鎮圧剤、エネルギー材、軍艦、軍用機、電子装置、高速運動エネルギーシステム、装甲装備、シミュレーター、画像装置、鍛造品、多用装備品、製造装置、指向性エネルギー兵器システム、低温超電導装置、ソフトウェア、技術(22分野)
Cf.国連軍備登録制度(大型兵器7種類の輸出入国名と数量の自主的情報提供)

活動:各加盟国が輸出許可申請を評価:1条(2011年で許可62,482件、不許可408件)
輸出許可申請書:物理的輸出、ブローカーリング、通過・積替え、技術移転
・基準(Criteria)
国際義務基準(国連憲章、禁輸の安保理決議を含む義務、その他の地域的国際約束)
使用者基準(犯罪集団、テロリスト無認可の非国家主体への武器移転の可能性)
使用基準(人権・人道法、ジェノサイド違反に移転武器が使用される可能性)
影響基準(国内・地域の安定化、進行中の紛争の悪化、持続可能な発展の阻害化)
受領国基準(人権侵害の前歴、社会・経済状況の悪化、正当防衛の要求、汚職慣習)

EU共通の立場2条:
基準1加盟国の国際義務及び国際的約束、特に安保理又はEUにより採択される制裁、不拡散その他の事項に関する協定及び他の国際義務の尊重(違反:不許可)
基準2最終仕向地国内の人権尊重及び当該国家による国際人道法の尊重
(国内抑圧:不許可、人権侵害:特別な注意、人道法の重大な侵害:不許可)
基準3緊張・武力紛争による最終仕向地国における国内事態(惹起・悪化:不許可)
基準4地域の平和、安全保障及び安定性の保持(武力による領域主張:不許可)
基準5加盟国の国家安全保障及び友好国・同盟国の国家安全保障(防衛・安保への潜在的効果や自軍への使用可能性を考慮する)
基準6テロ、同盟の性質および国際法の尊重に関する国際社会での購入国の行動(購入国の前歴を考慮する)
基準7軍事技術が購入国内で流出し有害な状況下で再輸出される危険性の存在(受領国の自衛利益・技術使用能力、輸出管理能力を考慮する)
基準8軍事技術の輸出と受領国の技術的経済的能力との両立性(持続可能な開発の阻害かを考慮する)

・履行確保方式
4条:加盟国による不許可理由の説明と不許可申請の回覧
許可の付与前に以前の不許可国との協議および不許可国への許可決定の通知
移転・移転拒否の決定は各加盟国の国内の自由裁量
5条:輸出許可には最終仕向地国による最終使用者の証明書が必要
8条:年次報告書の回覧

5. まとめにかえて―目標設定と普遍性の関係―
従来の文書:ガイドライン(非拘束的・自発的、地域限定)
ATT   :条約化・法的義務(共通基準に基づく国内法規則・認可制度の確立)
国家の最終判断権(前提として武器貿易の合法性)
履行確保(国内的実施及び報告制度、年次報告書、再検討会議)
(軍縮条約のような第3者機関による検証制度になじまない)
 *ATTは、最高の国際共通基準を設定する法的拘束力のある普遍的な文書を目指す
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ご登壇、ご来場の皆様、議論に参加くださいまして、本当に有難うございました。
シンポジウムを共催し、素晴らしい会場を提供くださいました拓殖大学の皆様にも、御礼を申し上げます。

7月2日から27日のATT国連交渉会議中、会議場で得られた情報をこのブログに掲載する予定です。
会議終了後の8月か9月頃には、報告会の開催を検討しております。
日時等が決まり次第、ブログやメールでご案内いたしますので、ぜひご参加いただけましたら幸いです。

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