「武器と市民社会」研究会

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国連安保理決議1540 ②

国連安保理決議1540 ②

4.12の主文パラグラフ(Operative Paragraph, OP)
国連安保理決議1540の決定と要請の具体的な内容は、12のOPで示されています。中でもOP1、OP2、OP3の三つは、決議の主要な義務を定めたOPであると言われています。まずOP1は、すべての国連加盟国に対し、大量破壊兵器と運搬手段の開発、取得、製造、所持、輸送、移転または使用を企てる非国家主体へのいかなる形態の支援も差し控えるよう要請しています。続いてOP2は、すべての国連加盟国に、大量破壊兵器と運搬手段を製造、取得、所持、開発、輸送、移転、または使用する非国家主体を刑事罰の対象として処罰することを視野に入れて、国内法を制定・執行するよう求めています。さらにOP3は、大量破壊兵器とそれらの運搬手段、および関連物資を適切に管理し、拡散を防止するための国内管理の実施を国連加盟国に要請しています。具体的には、大量破壊兵器等の関連品目の不正取引と不正仲介を探知・抑止・防止し、対処するための適切で効果的な国境管理の実施や、輸出、通過、積替、および再輸出を管理する適切な法令の制定などを求めています。

以下、国連安保理決議1540のOPの文言です。

OP1:すべての国は、核兵器、化学兵器又は生物兵器及びそれらの運搬手段の開発、取得、製造、所持、輸送、移転又は使用を企てる非国家主体に対し、いかなる形態の支援も提供することを差し控えることを決定する。

OP2:また、すべての国は、自らの国内手続に従って、いかなる非国家主体も、特にテロリストの目的のために、核兵器、化学兵器又は生物兵器及びそれらの運搬手段の製造、取得、所持、開発、輸送、移転又は使用並びにこれらの活動に従事することを企てること、共犯としてこれらの活動に参加すること、これらの活動を援助又はこれらの活動に資金を供することを禁ずる適切で効果的な法律を採択し執行することを決定する。

OP3:また、すべての国は、関連物資に対する適切な管理を確立することを含め、核兵器、化学兵器又は生物兵器及びそれらの運搬手段の拡散を防止する国内管理を確立するための効果的な措置を採用し実施することを決定し、この目的のため、すべての国が、以下を行うことを決定する。
(a)生産、使用、貯蔵又は輸送において、そのような品目の使途を明らかにし、安全を確保するための適切かつ効果的な措置を策定し維持すること。
(b)適切で効果的な防護措置を策定し維持すること。
(c)自らの国内法的権限及び法律に従って、並びに、国際法に合致して、必要なときは国際的な協力を通ずることを含め、そのような品目の不正取引及び不正仲介を探知し、抑止し、防止し及び対処するための適切で効果的な国境管理及び法執行の努力を策定し維持すること。
(d)輸出、通過、積替及び再輸出を管理する適切な法令、資金供与及び拡散に貢献する輸送といったそのような輸出及び積替に関連する資金及び役務の提供に対する管理並びに最終需要者管理の確立を含め、そのような品目に対する適切で効果的な国内的輸出及び積替管理を確立し、発展させ、再検討し及び維持すること。また、そのような輸出管理に関する法令の違反に対する適切な刑事上又は民事上の罰則を確立し及び執行すること。

OP4:安全保障理事会の仮手続規則28に従って、2年を超えない期間の間、すべての同理事会理事国により構成される同理事会の委員会を設置し、この委員会が、適当な場合には他の専門的意見も求めつつ、この決議の実施状況について、安全保障理事会の検討のため同理事会に対して報告することを決定するとともに、この目的のため、国に対し、この決議の採択から6カ月以内に、この決議の実施のためにとった又はとろうとする措置に関する最初の報告を委員会に提出するよう要請する。

OP5:この決議に規定するいかなる義務も、核兵器不拡散条約(NPT)、化学兵器禁止条約(CWC)及び生物兵器禁止条約(BWC)の締結国の権利及び義務と抵触する若しくはこれらを変更するものとして解してはならず、又は、国際原子力機関(IAEA)若しくは化学兵器禁止機関(OPCW)の責任を変更するものとして解してはならないことを決定する。

OP6:この決議を実施するにあたり、効果的な国内管理表が有用であることを認識し、すべての加盟国に対して、必要なときは、そのような表をできる限り早い機会に策定することを追及するよう要請する。

OP7:一部の国はこの決議の規定をその領域内において実施するにあたり支援を必要とすることを認識し、国に対し、可能なときは、個々の要請に応じて、上記の規定を履行するための法令上の基盤、実施の経験または資源を欠く国に対して適当な援助を提供するよう招請する。

OP8:すべての国に対して以下を要請する。
(a)核兵器、化学兵器又は生物兵器の拡散を防止することを目的とし、自らが締約国となっている多数国間条約の普遍的な採択、完全な実施及び必要な場合には強化を促進すること。
(b)不拡散に関する主要な多数国間条約の下での約束の遵守を確保するための国内法令を採択してない場合には、これを行うこと。
(c)不拡散の分野における共通の目的を追求し達成するため及び平和的目的のための国際協力を促進するための重要な手段として、特に国際原子力機関(IAEA)、化学兵器禁止機関(OPCW)及び生物兵器禁止条約(BWC)の枠内において、多国間の協力への約束を新たにし、これを満たすこと。
(d)そのような法律の下での義務について産業界や公衆に通報し、これらとともに作業する適当な方法を策定すること。

OP9:すべての国に対し、核兵器、化学兵器又は生物兵器及びそれらの運搬手段の拡散による脅威に対応するよう不拡散に関する対話及び協力を促進するよう要請する。

OP10:さらにその脅威に対処するため、すべての国に対し、自らの国内法的権限及び法律に従って、並びに、国際法に合致して、核兵器、化学兵器又は生物兵器、それらの運搬手段及び関連物資の不正取引を防止するための協力行動をとるよう要請する。

OP11:この決議の実施を緊密に監視し、適当な段階で、この目的のために必要とされる更なる決定を行う意図を表明する。

OP12:この問題に引き続き関与することを決定する。

<メモ5>
例えばオリビア・ボッシュ(英王立国際問題研究所)とピーター・バン・ハム(クリンゲンタール国際関係研究所)は、国連安保理決議1540の第一義的な義務は、OP1、OP2、OP3の三つで定められていると解説しています。”Global Non-Proliferation and Counter-Terrorism: The Impact of UNSCR 1540”のp.4を参照のこと。

<メモ6>
OP3(c)で言及されている「仲介(brokering)」とは仲介貿易取引のことで、例えば海外の輸出者と海外の輸入者との貿易を日本が仲介する場合、仲介貿易となります。売買契約は輸出者対仲介者、もしくは輸入者対仲介者で取り交わされ、実際の商品のやり取りは仲介者以外の二者間で行われます。仲介貿易取引においては売買契約だけでなく、貸借や贈与契約も含まれます。また、OP3(d)では「通過(transit)」「積替(trans-shipment)」「再輸出(re-export)」について触れています。まず「通過」とは、例えば貨物を輸送する船舶がある国の領海内を通過するだけ、もしくは港に寄港するが貨物の積み卸しなどはしないことを言います。次に「積替」とは、外国から到着した貨物を一時的に空港や港湾の保税地域に積み降ろし、再び外国向けの船舶や航空機に積み込む場合を言います。なお外務省による国連安保理決議1540の邦訳では「積換」となっていますが、ここでは「積替」としています。こちらの経産省による解説を参照して下さい。最後に「再輸出」とは、いったん輸入した貨物を再び外国に輸出することを言います。米国原産の技術などを組み込んだ製品などを米国以外の国から輸出する場合、米国政府の輸出許可が必要となる米国が実施する再輸出規制とは意味が異なるため注意が必要です。

<メモ7>
国連安保理決議1540の採択を受けて、日本も大量破壊兵器等の拡散防止を目的とした仲介貿易規制と積替規制を新たに導入しています。積替規制については、日本の場合、「仮陸揚げ貨物」として規制しています。例えば輸出貿易管理令第4条第1項の一などを参照のこと。また、日本においては、通過については、日本の領海を通過するだけ、もしくは港に寄港するだけでは輸出に該当しないという判断により、外為法上は規制されていません。再輸出は通常の輸出と同じ扱いで規制されています。

5.決議の履行確保
①国連加盟国の1540委員会への報告
OP4で要請されている通り、国連加盟国は決議1540委員会に、国連安保理決議1540を履行するために実施している、もしくは実施しようとしている措置についての報告書を提出しなければなりません。2011年10月現在、166カ国が報告書を提出しており、未提出は26カ国ということになっています。1540委員会に国連加盟国が提出した報告書については、こちら(英語)で確認できます。

1540委員会が国連加盟国から報告書を受け取った時点で、専門家が集まりその報告内容を分析し、決議の実施状況を見極めます。このプロセスを効率的に行えるよう、現在、決議の要請事項に照らして報告書を提出した国の決議の履行に関する達成度を記録できるマトリックスが作成されています。マトリックスについては、こちら(英語)で確認できます。

1540委員会による各国の達成度分析は公表されませんが、1540委員会の専門家メンバーであるリチャード・キューピット氏によると、多くの国が決議の要請をわずかしか遵守できていないといいます。キューピット氏の指摘については、こちら(英語PDFファイル)を参照して下さい。

②決議を履行するための資源や能力が乏しい国への支援とアウトリーチ
OP7は、国連安保理決議1540を履行する上で、決議の要請事項を実施するための資源や能力に乏しい国を支援するよう求めています。実際、1540委員会は決議の履行が難しい国からの支援要請を募っており、支援の要請があった場合は、例えば1540委員会が国連軍縮部(UNODA)や支援要請国の政府と協力し、決議の履行に向けた意識向上のためのセミナーやワークショップなどを開催しています。1540委員会に寄せられている支援要請については、こちら(英語)で確認できます。また、これまで行われてきたアウトリーチ活動については、こちら(英語)で確認できます。

※安保理決議1540に関する基本的な情報については、当ブログの前の記事をご覧ください。

(作成者:森山隆 国際基督教大学大学院博士課程中退。専門は軍縮、軍備管理、不拡散に関する国際法規制。2007年、英国国際戦略研究所(IISS)勤務。現在、雑誌編集者。安全保障輸出管理実務能力認定証取得者。)

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