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「武器と市民社会」研究会

2007年5月に設立された「武器と市民社会」研究会の公式ブログです

国連安保理決議1540 ①

国連安保理決議1540 ①

1.はじめに:国連加盟国を拘束する大量破壊兵器拡散防止決議
国際輸出管理レジームにおける合意事項に基づき、レジーム参加国が輸出管理を実施することで、大量破壊兵器等の拡散と通常兵器の過度の蓄積を防止しようにも、レジームに参加しない国から兵器の開発や製造に必要な貨物や技術の調達が可能であれば、そうした国を通じて兵器の開発や製造に必要な貨物や技術を入手することができるということになります。そのため、レジームに参加せず、輸出管理を厳格に実施していない国が抜け穴となることを防ぐには、できるだけ多くの国が国際的に調和の取れた輸出管理を行うことが必要です。

2004年4月28日に国連安全保障理事会が全会一致で採択した決議1540は「核兵器、化学兵器及び生物兵器並びにそれらの運搬手段の拡散が国際の平和及び安全に対する脅威を構成することを確認」した上で、「国連憲章第7章の下で」大量破壊兵器等の開発や製造などに必要な貨物の輸出や技術の提供を規制する輸出管理を実施することなどを国連加盟国に要請しています。つまり、国連安保理決議1540の採択により、特に大量破壊兵器等の拡散防止を目的とした輸出管理の実施はすべての国連加盟国の義務となったと言え、大量破壊兵器の拡散を防止する国際的に調和の取れた輸出管理が行われるようになるのではないかと期待されています。

なお、国連安保理決議1540の履行状況を把握・検討するため、安保理に1540委員会が設置され、その権限の期限は2年間とされていましたが、国連安保理決議1673の採択(2006年4月27日)で権限の期限をさらに2年間延長。これ以降も、国連安保理決議1810の採択(2008年4月25日)により、引き続き3年間延長されるとともに、2011年4月20日には国連安保理決議1977が採択され、1540委員会の権限の期限は、最終的に10年間延長(2021年4月20日まで)されることになりました。

<メモ1>
決議の文言は以下で確認できます。
決議1540委員会の国連公式サイトから、国連安保理決議1540、1673、1810、1977にアクセスいただけます(英語等)
②国連安保理決議1540、1673、1810については、以下で日本語訳がご覧いただけます。
決議1540(PDFファイル)
決議1673
決議1810

2.採択の経緯
ブッシュ前米大統領が2003年9月に国連総会で行った演説の中での提案が、国連安保理決議1540の採択の直接的な契機となっています。英文になりますが、こちら(PDFファイル)で演説の内容を確認できます。この中で、ブッシュ前米大統領は、ならず者国家(outlaw regimes)やテロリスト・ネットワークが大量破壊兵器を入手してしまうことが、国際の平和を脅かす重大な脅威となると強調。その上で、国連安全保障理事会が、国連加盟国に、①大量破壊兵器の拡散を犯罪とすること、②国際基準に合致した厳格な輸出管理を実施すること、③軍事転用されやすい機微な物資の安全を確保すること、を要請する「新しい大量破壊兵器反拡散決議」を採択すべきだと訴えています。ここでの提案は、国連安保理決議1540の主文パラグラフ(Operative Paragraph, OP)の中でも、主要な義務について定めたOPに反映されています。OPについては後ほど詳しく触れます。

3.決議の特徴
国連安保理決議1540は、国家レベルでの大量破壊兵器等の拡散よりも、むしろ非国家主体に重点を置いたものとなっています。実際、タリバンやアルカイダのメンバーやそれらの関連団体に対し、資産凍結などの制裁を科すことを目的とした国連安保理決議1267と、テロリスト・テロ組織への資金供与の防止を目指す国連安保理決議1373の二つの非国家主体を対象とした決議が、国連安保理決議1540を起草する際の参考になっています。国連安保理決議1540の文言は、とりわけ、国連安保理決議1373の規定を摸倣した形になっており、決議1373における国連加盟国の国内措置を促進することで決議の履行を確保するというアプローチや、国連加盟国の決議の履行の進捗状況の確認と情報共有のための委員会を設置するというアプローチが、国連安保理決議1540でも採用されています。

<メモ2>
①国連安保理決議1267(英語)は、1999年の国連安保理決議リストからご覧ください。
日本語訳はこちらです。
②国連安保理決議1373(英語)は、2001年の国連安保理決議リストからご覧ください。
日本語訳はこちら(PDFファイル)です。

<メモ3>
国連安保理決議1540は、決議の対象となる非国家主体を「いかなる国の法律に基づく権限の下でも行動していない個人又は団体」と規定しています。

<メモ4>
国連安保理決議1267により設置された対タリバン・アルカイダ制裁委員会、国連安保理決議1373により設置されたテロ対策委員会(Counter-Terrorism Committee, CTC)、国連安保理決議1540により設置された1540委員会の三つの委員会の議長は、国連安保理公開会合において共同でブリーフィングを行っており、ここでのブリーフィングを受けて、国連安保理は三つの委員会が緊密に情報を共有し、協力関係を強化していくよう要請しています。例えば2005年4月25日に行われた三つの委員会の議長による共同ブリーフィング(英語)を参照して下さい。

※決議の主文パラグラフ(Operative Paragraph, OP)の説明や、決議の履行確保については、当ブログの次の記事をご覧ください。

(作成者:森山隆 国際基督教大学大学院博士課程中退。専門は軍縮、軍備管理、不拡散に関する国際法規制。2007年、英国国際戦略研究所(IISS)勤務。現在、雑誌編集者。安全保障輸出管理実務能力認定証取得者。)

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