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「武器と市民社会」研究会

2007年5月に設立された「武器と市民社会」研究会の公式ブログです

安全保障輸出管理 国際輸出管理レジーム

安全保障輸出管理 国際輸出管理レジーム

1.国際輸出管理レジームの変遷
冷戦期の輸出管理は、共産圏諸国に対し、軍事能力の向上に資する可能性の高い貨物や技術を戦略物資として規制し、主に西側諸国から共産圏諸国へのハイテク技術の流出防止を目的として1949年に設立されたココム(Coordinating Committee for Multilateral Export Controls, COCOM=対共産圏輸出統制委員会)を基本としていました。ココムは国際条約に基づくものではなく、ココムでの合意事項は参加各国の国内法で実施されるという形を取っていました。また、ココムで規制されている品目を参加各国が個別に輸出する場合の輸出の可否については、ココム参加国の全会一致で決めていたため、ある参加国の輸出を他の参加国が拒否するということも可能でした。

他方で1970年代以降、大量破壊兵器等の拡散防止を目的とした輸出管理レジームが逐次発足していきます。まず、1974年のインドの核実験を契機に核兵器関連の貨物と技術の輸出管理の枠組みである「原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group, NSG)」が設立。そして、1984年にイラン・イラク戦争においてイラクが化学兵器を用いたことが明らかになったことを受けて、化学兵器の原材料や製造設備、関連技術に関する輸出管理を目的とした「オーストラリア・グループ(Australia Group, AG)」が1985年に結成。なお、AGは1990年に生物兵器関連の貨物や技術の品目も規制対象に追加し、生物・化学兵器関連の輸出管理レジームに発展しています。さらに1987年には大量破壊兵器の運搬手段となるミサイルなどの開発に使われる貨物や技術に対する輸出管理の枠組みである「大量破壊兵器の運搬手段であるミサイル及び関連汎用品・技術の輸出管理体制(Missile Technology Control Regime, MTCR)」が創設されました。ココムが共産圏諸国に限定した輸出管理レジームであるのに対して、これらの大量破壊兵器等に関連する輸出管理レジームは、原則、すべての国に対する輸出を規制しています。ココムとは異なり、大量破壊兵器等に関連する輸出管理レジームのように、すべての国を対象に輸出を規制するやり方を「不拡散型輸出管理」と呼びます。

冷戦終結後は、ココムの規制対象国であったソ連の崩壊と東側諸国の変化により、ココムの必要性が低下します。最終的にココムは1994年に解消。一方、冷戦終結後も頻発する地域紛争で使われる通常兵器の不透明な移転と過剰な蓄積の防止を目的としたワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement, WA)が1996年に発足し、これにはロシアも参加しています。WAは、大量破壊兵器等に関する輸出管理レジームと同様、「不拡散型輸出管理」の枠組みとなっています。

2.国際輸出管理レジームの特徴と課題
先にも述べた通り、ココムと同様、NSG、AG、MTCR、WAの四つの輸出管理レジームは条約に基づくものではなく、紳士的な申し合わせにより組織化された枠組みであるため、法的拘束力はありません。NSG、AG、MTCR、WAの四つの輸出管理レジームでは、規制される貨物や技術のリストや、リストに基づいて輸出管理を実施する際のガイドラインの内容については、レジーム参加国の全会一致の合意に基づき決定されますが、合意内容をレジーム参加国が実際に国内法に反映するのかどうか、また個別に輸出管理を実施する際、どの品目の貨物の輸出や技術の提供を許可、もしくは不許可とするのかといった判断については、あくまで参加各国の政府の裁量に任されています。従って、ココムのように、ある参加国の輸出が他の参加国により拒否されるということはありませんし、合意事項の遵守に関する検証制度も存在しません。さらに、これら四つの参加国数はそれぞれ数十カ国と多くはありません。NSGが46カ国、AGが40カ国、MTCRが34カ国、WAが40カ国です。そのため、レジームに参加しない国を経由する迂回輸出などが問題となっています。

3.関連リンク
①NSGについて
http://www.nuclearsuppliersgroup.org/Leng/default.htm(英語)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/nsg/index.html(外務省のサイト。日本語)
②AGについて
http://www.australiagroup.net/en/index.html(英語)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bwc/ag/(外務省のサイト。日本語)
③MTCRについて
http://www.mtcr.info/english/index.html(英語)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html(外務省のサイト。日本語)
④WAについて
http://www.wassenaar.org/(英語)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/wa/index.html(外務省のサイト。日本語)

(作成者:森山隆 国際基督教大学大学院博士課程中退。専門は軍縮、軍備管理、不拡散に関する国際法規制。2007年、英国国際戦略研究所(IISS)勤務。現在、雑誌編集者。安全保障輸出管理実務能力認定証取得者。)

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