FC2ブログ

「武器と市民社会」研究会

2007年5月に設立された「武器と市民社会」研究会の公式ブログです

安全保障輸出管理 概論②

安全保障輸出管理 概論②

3.大量破壊兵器等について
大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction, WMD)とは、核兵器と生物・化学兵器のことであると言われています。また、大量破壊兵器そのものではありませんが、ミサイルをはじめとする大量破壊兵器を運搬する手段も、大量破壊兵器そのものと同様に問題視されています。そのため、安全保障輸出管理では、大量破壊兵器そのものと運搬手段を引っくるめて「大量破壊兵器等」と呼び、大量破壊兵器と運搬手段双方に関連する貨物の輸出と技術の提供を規制し、それらの拡散を防止しようとしています。日本の安全保障輸出管理においては、「大量破壊兵器等」を「核兵器、軍用の化学製剤もしくは細菌製剤、もしくはこれらの散布のための装置もしくはこれらを運搬することができるロケットもしくは無人航空機であってその射程もしくは航続距離が300キロメートル以上のもの」と定義し、これらを「核兵器等」と総称しています。「輸出貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令」の第一を参照して下さい。

<メモ6>
米国防総省の軍事関連用語辞書では、大量破壊兵器について、核兵器と生物・化学兵器に加え、放射性兵器(radiological weapons)も含めています。こちら(英語:PDFファイル)を参照して下さい)。

<メモ7>
核兵器に対してはその拡散を防止するための「核兵器不拡散条約(NPT)」、化学兵器と生物兵器に対してはそれぞれの開発、生産、貯蔵などを禁じる「化学兵器禁止条約(CWC)」と「生物兵器禁止条約(BWC)」が存在していますが、それらの運搬手段を規制する条約はありません。弾道ミサイルについては、2002年11月にオランダのハーグで採択された、弾道ミサイルの拡散防止や開発・実験・配備の自制などについて定める「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」がありますが、HCOCに法的拘束力はありません。運搬手段についての輸出規制は、「大量破壊兵器の運搬手段であるミサイル及び関連汎用品・技術の輸出管理体制(MTCR)」の下で具体的に運用されています。MTCRについては後ほど詳述します。

4.通常兵器について
現在、通常兵器全般に対して、開発や保有、取引などを禁止、もしくは制限する条約はありません。対人地雷やクラスター弾のように、特定の限られた通常兵器対して、開発や製造、保有、委譲などを禁止する条約が存在しているにとどまっています。むしろ、国連憲章第51条で国連加盟国の自衛権が認められており、自国の安全を確保するための通常兵器の取引は合法であると考えられています。
しかし、何らの制約なく、通常兵器やその関連の貨物の輸出や技術の提供がなされることで、国際や地域の平和と安全が損なわれてしまうことを避けるため、通常兵器関連の貨物の輸出と技術の提供を規制するワッセナー・アレンジメント(WA)という国際輸出管理レジームがあります。ただ、WAの場合、通常兵器取引の合法性という性質を踏まえ、大量破壊兵器に対する輸出管理とは異なり、兵器そのものの移転や拡散を阻止すること自体を目的としてはいません。そのためWAの目的は、「通常兵器とその関連の汎用品・汎用技術の移転の透明性と責任を高め、地域的・国際的な安全を揺るがすような通常兵器の蓄積を防止すること」となっています。WAの目的については、英文になりますがこちらのサイトを参照して下さい。
多発している地域紛争を激化させないためにも、通常兵器の関連貨物・技術の輸出・提供を規制することの必要性が認識されている半面、国内や地域の治安を維持するためには、ある程度の通常兵器の提供が望ましい場合もあります。従って、どのような場合に国際や地域の平和と安全を脅かすような通常兵器の過剰蓄積となり、関連の貨物と技術の輸出や提供を不許可とすべきなのかについて慎重に検証し、判断することが求められていると言えます。WAについても後ほど詳述します。

(作成者:森山隆 国際基督教大学大学院博士課程中退。専門は軍縮、軍備管理、不拡散に関する国際法規制。2007年、英国国際戦略研究所(IISS)勤務。現在、雑誌編集者。安全保障輸出管理実務能力認定証取得者。)

関連記事

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://aacs.blog44.fc2.com/tb.php/64-52041c3f
該当の記事は見つかりませんでした。