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「武器と市民社会」研究会

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ATT第1回締約国会議の争点③報告書-2

2015年8月24日(月)から8月27日(木)まで、メキシコのカンクンで、武器貿易条約(ATT)の第1回締約国会議が開催されています。

この会議では、今後の締約国会議における手続規則や、条約事務局の機能のありかた、事務局の運営や締約国会議開催などのための資金など、条約の実効性を左右する重要事項について検討されています。また、各国が自国の武器輸出入や自国の武器移転規制などについてATT条約事務局に提出する報告書のテンプレートの詳細や、報告書が一般公開されるか否かについても検討されています。

これらの事項について、いくつかの記事に分けて解説しています。
記事1(手続規則)記事2(条約事務局の機能と今後の資金)は、リンク先をご覧ください。

この記事では、各国が自国の武器輸出入や自国の武器移転規制などについてATT条約事務局に提出する報告書のテンプレートの詳細に関する争点を説明しています。

報告書についての論点は非常に多いため、3つほどの記事に分けて解説しています。報告書に関する基本的な問題や、2013年に採択されたATTにおける報告書に関する記載、および争点①については、報告書に関する1つめの記事をご覧ください。

5-2. 第一回締約国会議に向けた争点

② 条約上の義務である措置と推奨されている措置

- ATTの第13条第1項において、各締約国は、自国にとってATTの効力が発生してから1年後までに、ATTの実施のために行った措置(国内法、規制リスト、その他の行政的措置などを含む)に関する最初の報告書(initial report)を提出することになっています(以下では「最初の報告書」と記す)。

- この報告書については、ATTにおいて義務ではない措置についても、ATTに関連する措置については報告すべきだと主張する国があった一方で、ATTにおいて義務である措置とそうでない措置を明確に分けて、前者だけを報告することを可能にすべきだと主張する国もありました。

-  2015年8月12日に作成された報告書テンプレート草案(ATT/CSP1/2015/WP.4)には、この「最初の報告書」の草案も含まれています。そして、この草案は、条約において締約国の義務である措置に関するテンプレートと、条約において締約国に対して奨励されている措置に関するテンプレートが明確に分けられています。このことは、締約国は、条約において義務ではない措置に関しては報告しなくてもよい(報告するかどうかを各国が選ぶことができる)ことを意味します。

③ 報告する武器の範囲

- ATTの第13条第3項において、各締約国は、毎年5月31日までに、条約第2条(1)の通常兵器について、前の暦年(1月1日から12月31日まで)において許可されたあるいは実際の(authorized or actual)輸出と輸入について、報告書を提出することになっています(以下では「年次報告書」と記す)。そして、この報告書は締約国が国連軍備登録制度などの関連の国連フレームワークに提出した情報と同じ情報を含めたものでよい(may contain)ことになっており、また、商業的に機微なあるいは国家安全保障上の情報は報告書から除外できる(Reports may exclude commercially sensitive or national security information)ことになっています。

- 国連軍備登録制度の兵器カテゴリーは冷戦終結の頃に作成されたものであり、カテゴリーから抜け落ちる武器が多いことや、アップデートが必要であることが指摘されており、報告書のテンプレートも大雑把なものです。今回の締約国会議に向けては、「年次報告書」のテンプレートは国連軍備登録制度の報告書と同様のものにすべきという国もありました。しかし、ATT第5条第3項においては、締約国は、重兵器を中心とした7カテゴリーに関して「条約発効時に国連軍備登録制度において記述されている兵器よりも狭い範囲の通常兵器を対象とするものであってはならない」とされており、これは国連軍備登録制度の兵器だけを規制して報告すれば良いという意味では必ずしもありません。したがって、第一回締約国会議に向けて、NGOや研究者などのなかには、国連軍備登録制度の兵器カテゴリーから抜け落ちるような武器についても報告を促すようなテンプレートにすべきだと主張していました。

- また、ATTの第 5 条第 3 項には、各締約国による小型武器・軽兵器の定義についても、「この条約の効力発生時における国連の関連文書(relevant United Nations instruments)において用いられるものよりも狭い範囲の通常兵器を対象とするものであってはならない」と記されています。しかし、ここでの「国連の関連文書」としては、まずは2001 年の「銃器並びにその部品及び構成品並びに弾薬の非合法な製造及び取引の防止に関する議定書」(銃器議定書)や、2005 年の「非合法小型武器・軽兵器の特定と追跡に関する国際文書」(ITI)が考えられるものの、実際にどの文書を指すのかに関する解釈は各締約国に委ねられます。そして,この 2 つの文書が対象とする兵器の範囲は同一ではありません。さらに、国連軍備登録制度で使用されている小型武器・軽兵器の範囲はあるものの、これは軍用の小型武器・軽兵器に限定しているなど、上記2つよりも極端に狭くなっています。

- 今回の締約国会議に向けた議論においては、国連軍備登録制度の定義を援用してショットガンなどの「民間用」の小型武器・軽兵器の報告義務をなくそうとする国がみられました。しかし、銃器議定書やITIでは「民間用」の小型武器・軽兵器が除外されているわけではありません。しかも、民間人が所有することを許可される「民間用」小型武器・軽兵器の定義は国によって異なり、例えばアメリカなどでは軍が使用する小型武器・軽兵器に限りなく近い銃を民間人が所持できます。加えて、銃器議定書やITIで使用されている定義よりも狭い範囲の通常兵器について報告するようなテンプレートは、ATT第 5 条第 3 項の小型武器・軽兵器の定義に関する義務――「この条約の効力発生時における国連の関連文書(relevant United Nations instruments)において用いられるものよりも狭い範囲の通常兵器を対象とするものであってはならない」――との整合性がないとの指摘があります。

- 2015年8月12日に作成された報告書テンプレート草案(ATT/CSP1/2015/WP.4)では、年次報告書の武器輸出入情報のテンプレートは、国連軍備登録制度の報告書を大枠で踏襲したものです。他のカテゴリーの武器についても報告書に含むことができるようにはなっていますが、それは各国がボランタリー(任意)で記入するものであることが明確に示されています。そして、小型武器・軽兵器の定義も国連軍備登録制度の定義を踏襲しており、これについてNGOや研究者などから強い反発がみられています。

【追記:会議中の2015年8月26日に配布された報告書テンプレート草案(ATT/CSP1/2015/WP.4/Rev.1)においても、上記の問題が同様に残っています。】
【再追記:会議最終日の8月27日に、さらに修正案(ATT/CSP1/2015/WP.4/Rev.2)が提示されましたが、最終的に、テンプレート案については今後のプロセスのなかでさらなる検討が加えられることになりました。】

(作成者:榎本珠良 「武器と市民社会」研究会共同代表。2003年9月から2015年8月まで、(特活)オックスファム・ジャパンにて軍備管理・軍縮を担当。オックスファム勤務時は団体内部の規則に則り仕事名(夏木碧)を使用。オックスファムの立場を離れ、一研究者としてATT第1回締約国会議に参加中。)

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