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「武器と市民社会」研究会

2007年5月に設立された「武器と市民社会」研究会の公式ブログです

ATT第1回締約国会議の論点②条約事務局の機能、今後の資金

2015年8月24日(月)から8月27日(木)まで、メキシコのカンクンで、武器貿易条約(ATT)の第1回締約国会議が開催されています。

この会議では、今後の締約国会議における手続規則や、条約事務局の機能のありかた、事務局の運営や締約国会議開催などのための資金など、条約の実効性を左右する重要事項について検討・決定される予定です。また、各国が自国の武器輸出入や自国の武器移転規制などについてATT条約事務局に提出する報告書のテンプレートの詳細や、報告書が一般公開されるか否かについても検討される予定です。

これらの事項について、いくつかの記事に分けて解説しようと思います。
記事1はこちらをご覧ください。

2.条約事務局の機能や場所

- 条約事務局に、未批准国の批准を促したり、各国が提出する報告書の内容を精査・検討したりといった機能を持たせた場合には、条約の普遍性(批准国の増加)や「実効性」を確保することに貢献する可能性があるため、こうした機能を持たせるべきだと主張する国々もあります。しかし、日本など、条約事務局は条約に関する手続きや締約国会議のロジスティクスなどの最低限の役割を果たすものにすべきだと主張する国々もあります。

- 2015年8月12日に作成された、条約事務局の機能に関する合意文書の草案(ATT/CSP1/2015/WP.2)においては、条約事務局の役割について、締約国会議などのATT関連会議をスムーズに運営することや、締約国間などの連絡を容易にすること、ATT関連会議の記録や文書を保管すること、ATTおよび条約事務局に関するウェブサイトを作成することなど、最低限の役割が記されているのみです

【追記:2015年8月25日(火)に配布され、8月26日(水)に採択された修正案(ATT/CSP1/2015/WP.2/Rev.1およびATT/CSP1/2015/WP.2/Rev.2:Rev.2が採択されたバージョン)においても、最低限の役割が記されているのみです】

- 条約事務局の場所としては、ジュネーブ(スイス)、ウィーン(オーストリア)、ポートオブスペイン(トリニダード・トバゴ)が立候補していますが、会議参加国の意見は分かれています。カリブ共同体(CARICOM)、アルゼンチン、オランダ、ベリーズ、アンティグア・バーブーダ、ニュージーランド、スペイン、ペルー、チリは、ポートオブスペインに事務局を置くことを支持しています(全て8月24日本会議の声明)。これに対して、ヨーロッパ諸国は、明確な都市名を主張しない傾向にありますが、「多国間交渉の場として確立された場が良い」、「全ての国の軍縮関係の担当者にとってアクセスが容易な場所が良い」など、暗にジュネーブを支持するような主張をしています。

【追記:2015年8月26日(水)の本会議において、2度の投票の結果、条約事務局はジュネーブに置かれることになりました。】

3. 条約事務局や締約国会議等の会議開催のための資金

- 条約事務局の運営や締約国会議等の会議開催のための資金をどの国がどの程度負担するのかについては、まず、締約国は基本的に何らかの形で負担するとして、署名はしたが批准していない国(以下では「署名国」と記す)や、署名も批准もしていない国はどこまで負担するのか、といった論点があります。

- 次に、例えば締約国が条約事務局の運営のための資金を負担するとして、各締約国の負担割合をどのように算出するかという論点もあります。多くの国は、基本的に国連加盟国が支払う国連分担金の比率(分担率)の算出方法に倣う形で、加盟国が支払い能力に応じて負担することを支持しています。しかし、日本は、支払能力が低い国々も一定以上の額を負担すべきと主張しています。また、支払能力が高い国々については、日本などの国々は、負担額に上限(cap)を設けるべきだと主張しています。そして、この上限を設けることを求めている国々のなかでは、多くの国が22パーセント(国連分担金の上限と同じ)という数字を支持しているのに対して、日本は12パーセントにすべきだと主張しています。

- 2015年8月12日に作成された、資金に関する規則の草案(ATT/CSP1/2015/WP.3)において、まず、締約国は、締約国会議等の会議開催のための資金を負担し、各国の負担額は国連分担金の算出方法に倣う形で算出することになっています(規則5)。ただし、支払能力が低い国の負担に関する各国の見解の相違を反映して、「締約国は最低限でも100米ドルを支払う」といった表現が括弧で囲まれており、さらなる検討を要することが示されています(規則5)。支払能力が高い国の負担に関しては、上限を設けるものとされていますが、「22パーセント」と「12パーセント」という数字が両方とも括弧付きで併記されており、こちらもさらなる検討を要することが示されています(規則5)。

- 次に、8月12日の草案において、署名国や、署名も批准もしていない国は、締約国会議等の会議に参加する場合にのみ、その会議のための資金を負担し、各国の負担額は国連分担金の算出方法に倣う形で算出することになっています(規則5)。ただし、上記の締約国に関する記述と同様に、「最低限でも100米ドルを支払う」という表現が括弧で囲まれ、支払能力が高い国の負担上限に関する「22パーセント」と「12パーセント」という数字も括弧付きで併記されており、さらなる検討を要することが示されています(規則5)。

- また、8月12日の草案において、条約事務局の運営に関わる資金は締約国が負担する(署名国や、署名も批准もしていない国は負担しない)ことになっており、各国の負担額は国連分担金の算出方法に倣うことになっています(規則6)。ただし、ここでも、「最低限でも100米ドルを支払う」という表現が括弧で囲まれ、支払能力が高い国の負担上限に関する「22パーセント」と「12パーセント」という数字も括弧付きで併記されており、さらなる検討を要することが示されています(規則6)。

- 以上のように、日本などの国々が、各国の分担金に最低負担額と上限を設けることを主張しているのに対して、「コントロール・アームズ」国際キャンペーンは、そのような最低負担金や上限は設けるべきではないと主張しています。

【追記:2015年8月25日(火)に配布され、8月26日(水)に採択された修正案(ATT/CSP1/2015/WP.3/Rev.1)では、上記の全ての項目について、最低限100米ドルを支払うものとされ、負担上限は22パーセントになっています】

4. 資金に関するその他の論点

- 締約国会議開催のための資金については、各国が分担金を支払わなかった場合の対応についても議論されています。2015年8月12日に作成された、資金に関する規則の草案(ATT/CSP1/2015/WP.3)においては、予定されている締約国会議の初日より2か月前になっても、開催資金の80パーセントが集まっていない場合は、会議議長は締約国に会議開催の延期を助言することができる(may advice)と記されています(規則5)。これについて、「コントロール・アームズ」国際キャンペーンは、このような文言は挿入されるべきではなく、各国の分担金支払いを促して開催資金を集める方法を検討すべきであると主張しています。

【追記:2015年8月25日(火)に配布され、8月26日(水)に採択された修正案(ATT/CSP1/2015/WP.3/Rev.1)の規則5からは、この延期措置は削除されています。】

- この会議に向けた議論においては、アメリカが、NGOからも締約国会議の参加費(1団体につき500米ドル)を徴収すべきだと主張し、イギリス、フィンランド、フランスなどの国々が支持していましたが、航空券料金や宿泊費・食費等に加えて500米ドルの参加費も支払わなければいけなくなると、NGOの参加が実質的に制限されることになります。8月12日の草案には、NGOから参加費を徴収する旨は盛り込まれていませんが、8月23日の段階では、アメリカがNGOからも徴収すべきだという主張を続けているとの情報があります。

【追記:NGOから参加費を徴収する旨は、合意されませんでした】

- 8月12日の草案には、資金的な影響がある決定については、手続規則の規則35に従って合意すると記されています。そして、8月5日の手続規則草案(ATT/CSP1/2015/WP.1)の規則35には、資金的な影響のある事項についてはコンセンサスでの意思決定を目指し、そのための最後の手段として、会議議長は意思決定を最長24時間延期することを検討する(shall consider)が、それは会議閉幕までに決定できる場合に限る旨が記されています。そして、 どうしてもコンセンサスで決定できない時は、出席し表決に参加する締約国の3分の2の多数の賛成により決定することが記されています(規則35)。

【追記:2015年8月25日(火)、手続規則(ATT/CSP1/2015/WP.1/Rev.1)が採択されました。2015年8月5日に作成された手続規則草案(ATT/CSP1/2015/WP.1)からほぼ変更ありません】

(作成者:榎本珠良 「武器と市民社会」研究会共同代表。2003年9月から2015年8月まで、(特活)オックスファム・ジャパンにて軍備管理・軍縮を担当。オックスファム勤務時は団体内部の規則に則り仕事名(夏木碧)を使用。オックスファムの立場を離れ、一研究者としてATT第1回締約国会議に参加中。)

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