「武器と市民社会」研究会

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ATT第1回締約国会議の論点①手続規則

2015年8月24日(月)から8月27日(木)まで、メキシコのカンクンで、武器貿易条約(ATT)の第1回締約国会議が開催されています。

この会議では、今後の締約国会議における手続規則や、条約事務局の機能のありかた、事務局の運営や締約国会議開催などのための資金など、条約の実効性を左右する重要事項について検討・決定される予定です。また、各国が自国の武器輸出入や自国の武器移転規制などについてATT条約事務局に提出する報告書のテンプレートの詳細や、報告書が一般公開されるか否かについても検討される予定です。

これらの事項について、これからいくつかの記事に分けて解説しようと思います。

1. 手続規則

今後の締約国会議の手続規則は、これから長く続く締約国会議プロセスにおける議論や合意の内容、会議の透明性を大きく左右し、条約の「実効性」に影響を及ぼすことが考えられます。主な論争点は、以下の2つです。

1-A. 会議における意思決定方法

- 今後の締約国会議において意思決定をする際には、実質的事項であっても手続的事項であっても(あるいは手続的事項については)「コンセンサス」で行うべきと主張する国もありますが、これは1か国でも反対したら決定できないことを意味します。これに対して、実質的事項であっても手続的事項であっても(あるいは手続的事項については)「コンセンサス」で合意できない場合は過半数ないし3分の2の多数により表決で決定できるようにすべきだと主張する国もあります。

- また、「コンセンサス」で決定できない場合には意思決定を24時間(ないしそれ以上)延期すべきと主張する国もあり、日本はこの立場をとっています。しかし、会議の最終日に24時間(ないしそれ以上)も意思決定を延期することは、次の年の締約国会議まで何も決められないことを意味しかねないという問題があります。また、決定の延期が手続き規則に盛り込まれた会議では、意思決定を次の会議まで延期するような事態を避けるという名のもとに、「コンセンサス」で決定できるような内容の合意が採択されがちです。そのため、「コントロール・アームズ」国際キャンペーンは、この延期措置を盛り込むことに反対する立場をとっています。

- 会議前の2015年8月5日に作成された手続き規則草案(ATT/CSP1/2015/WP.1)には、実質的な事項についてはコンセンサスでの意思決定を目指し、そのための最後の手段として、会議議長は意思決定を最長24時間延期することを検討する(shall consider)が、それは会議閉幕までに決定できる場合に限る、という旨が記されています(規則33)。そして、 どうしてもコンセンサスで決定できない時は、出席し表決に参加する締約国の3分の2の多数の賛成により決定することになっています(規則33)。

- また、8月5日の草案においては、手続き的な事項についてもコンセンサスでの意思決定を目指し、それができない場合は主席し表決に参加する締約国の過半数の賛成により決定することになっています(規則34)

【追記:2015年8月25日(火)、手続規則(ATT/CSP1/2015/WP.1/Rev.1)が採択されました。2015年8月5日に作成された手続規則草案(ATT/CSP1/2015/WP.1)からほぼ変更ありません】

1-B. 締約国会議の透明性、各国やNGOなどの参加レベル・発言権

- 今後の締約国会議の公開性の程度は、条約第1条で目的として示された透明性の向上にかかわります。これについては、ウルグアイやニュージーランド、南アフリカをはじめ、締約国会議における全ての会合を公開すべきと主張する国もあれば、アメリカや日本、フランスのように、締約国会議のなかで非公式会合(基本的には政府関係者しか参加できず、そこで議論された内容や共有された情報は公開されない)を設けることを支持する国もあります。

- また、締約国だけでなく、アメリカのように条約に署名したが批准していない国(以下では「署名国」と記す)や、中国やロシアなどのように署名も批准もしていない国、あるいは国連機関やNGOなどが、締約国会議にどこまで参加してどの程度の発言機会を得るのかという点も、会議の流れや議論の内容を大きく左右するため、論争が続いてきました。

- さらに、第1回締約国会議に向けた議論においては、ATTを支持する(ATTの目的や趣旨に合致する活動をしている)NGOだけが会議に参加できることにすべきか、あるいはATTを批判している全米ライフル協会(NRA)などの人々も会議に参加できることにすべきか、といった議論もあります。アメリカはNRAなども参加できることにすべきと主張しており、「コントロール・アームズ」国際キャンペーンは、ATTの目的や趣旨に合致する活動をしているNGOに限定すべきだと主張しています。

- 会議前の2015年8月5日に作成された手続き規則草案(ATT/CSP1/2015/WP.1)においては、締約国は全ての会合に出席して意思決定に参加する権利を持つことになっており(規則1)、署名国は意思決定に参加する権利はないが全ての会合に出席できることになっています(規則2)。中国やロシアのような署名も批准もしていない国はオブザーバーとして締約国会議に出席して本会議で発言できることになっており(規則3)、国連や国際機関の関係者もオブザーバーとして締約国会議に出席して本会議で発言できることになっています(規則4)。NGOについては、「NGOの国際コアリションや産業界を代表するアソシエーション」および「NGOを含む市民社会の代表や産業界の代表」(規則5)もオブザーバーとして締約国会議に出席して本会議で発言できることになっています。

- ただし、8月5日の手続き規則草案においては、基本的に締約国会議の本会議は公開され、オブザーバーも出席できることになっているものの(規則13)、「臨時会合」(extraordinary meetings)を開催することが可能になっており(規則14)、これにオブザーバーの国々や団体が参加できるか否かについては明確に記されていません。また、本会議においても、締約国や署名国の発言が全て終わった後にオブザーバーが発言できることになっています(規則20)。

【追記:2015年8月25日(火)、手続規則(ATT/CSP1/2015/WP.1/Rev.1)が採択されました。2015年8月5日に作成された手続規則草案(ATT/CSP1/2015/WP.1)からほぼ変更ありません】

条約事務局の機能、事務局の運営や締約国会議開催の資金、報告書のテンプレートに関しての争点は、次回以降の記事で説明いたします。

(作成者:榎本珠良 「武器と市民社会」研究会共同代表。2003年9月から2015年8月まで、(特活)オックスファム・ジャパンにて軍備管理・軍縮を担当。オックスファム勤務時は団体内部の規則に則り仕事名(夏木碧)を使用。オックスファムの立場を離れ、一研究者としてATT第1回締約国会議に参加中。)

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