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「武器と市民社会」研究会

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武器貿易条約(ATT)3月27日条約草案の分析:その3

3月18日から28日まで、ニューヨークの国連本部で武器貿易条約(ATT)交渉会議が開催されています。
このブログ記事作成者のツイッター・アカウントでは、会議の状況などを随時つぶやいております。

3月27日(水)正午前、ほぼ最終版となる予定の条約草案(以下、3月27日草案)が配布されました。この後から最終日の3月28日(木)までは、形式や文言を整えるなど、規制内容に影響を与えない程度の修正しか行われない予定です。この草案も、Scribdからご覧いただけます。

 以下、3月27日草案の主要部分に関する分析を、3つの記事に分けて掲載いたします。以下の第3弾は、輸入許可以降から最後までを扱います。とりあえずの分析ですので、また後で加筆できましたらと思っております。

【第8条:輸入規制】

 7月26日草案においては、輸出、輸入、ブローカリング(仲介)、通過・積替などが定義されていないため、輸入として規制する行為を狭く解釈することも可能であった。この問題は、3月22日草案でも3月27日草案でも同様である

 以前の記事で指摘したように、3月22日草案の前の3月20日草案第7条(輸入)第2項では、各締約国が任意で行う輸入規制について、「輸入国の管轄下の輸入(imports under its jurisdiction)」という表現が挿入されていた。こうした表現は日本などが主張していた。日本にある米軍基地向けの輸入といったケースについて、明確に規制対象外にするためなのかもしれない。3月22日草案第8条2にも、3月27日草案第8条2にも、この表現が残っている

 3月27日草案分析その1で記したように、第2条では、締約国が海外に駐留するその国の軍などに向けて、通常兵器を国境を越えて移動させる場合(international movement)を規制対象外としている。第8条における上記の表現の挿入によって、例えば日本にある米国基地向けの兵器について、たとえ米国がATTの締約国にならなくとも、その兵器を日本国内に移動させる際に、日本が輸入規制を適用する必要がなくなることが考えられる。

【第9条:通過・積替規制】

 7月26日草案においては、輸出、輸入、ブローカリング(仲介)、通過・積替などが定義されていないため、通過・積替として規制する行為を狭く解釈することも可能であった。この問題は、3月22日草案でも3月27日草案でも同様である

 7月26日草案第9条において、・通過・積替については、締約国はその規制のために、「必要でありかつ実施可能な場合に(where necessary and feasible)」、「適切な(appropriate)」法的・行政的・その他の措置をとる、とされていた。何をもって「適切な措置」とみなすのか、そもそもの規制を「必要であり実施可能」とみなすのかは、各国の裁量で判断することになる。3月22日草案第9条においても、3月27日草案第9条においても、同様の表現が残っており、通過・積替について、具体的な規制義務を課すものとは言い難い

 以前の記事で指摘したように、3月22日草案の前の3月20日草案第8条(通過・積替え)第1項には、「管轄下の(under its jurisdiction)」「国際法に則って(in accordance with international law)」といった文言が挿入されていた。とりわけ後者の文言は日本が主張していた。国際海洋法上の無害通航権(外国船舶が、沿岸国の平和・秩序・安全を害さないかぎり、その沿岸国の領海を自由に通航できる権利)を想定していると思われた。3月22日草案第9条1にも、3月27日草案第9条1にも、同様の表現がある。

【第10条:仲介規制】

 7月26日草案においては、輸出、輸入、ブローカリング(仲介)、通過・積替などが定義されていないため、通過・積替として規制する行為を狭く解釈することも可能であった。この問題は、3月22日草案でも3月27日草案でも、同様である。

 7月26日草案の第8条は、仲介について、締約国はその規制のために「各国の国内法の範囲内で(within its national laws)」、「適切な措置をとる(shall take the appropriate measures)」とされていたが、その措置の内容は各国の裁量で判断することになる。具体的な規制の義務を課すものとは言い難かった3月22日草案第10条も、3月27日草案第10条も、若干の違いはあっても同様の意味の表現が使用されている。したがって、ブローカリングについて、具体的な規制義務を課す条項にはなっていない。

 2012年7月ATT交渉会議の議論においては、仲介の定義を、2011年文書に書かれていた、他国に居住する自国民による仲介行為も規制する(域外管轄権を認める)という意味合いの文言(「brokering activities taking place within its territories or by its nationals」)にすることについて、ベルギーなどが支持し、日本を含めた国々が反対していた。7月26日草案では、「brokering taking place under its jurisdiction」という文言になっており、他国に居住する自国民による仲介行為を規制するか否かは各国の裁量に任されると解釈しうるものになった3月22日草案第10条でも、3月27日草案第10条でも、同じ文言になっている。

 2011年文書に書かれていた、締約国は全てのブローカーが仲介行為を行う前に国に登録するようにする、という旨の記述は、7月3日文書にも7月24日草案にもみられなかった。7月26日草案では、この事前登録について、各国の裁量で行う(may)という表現で復活している。しかし、これは義務であることを意味しないため、ブローカーの事前登録制度を設けなくても構わないことになった。3月22日草案第10条でも、3月27日草案第10条でも、裁量を示す表現(may)が使用されている。さらに、以前の記事で指摘したように、3月22日草案の前の3月20日草案第9条(ブローカリング)では、「ブローカー取引に携わる前に(before engaging in brokering transactions)」という表現が「ブローカリングに携わる前に(before engaging in brokering)」という表現に代わっていた。いずれにしても締約国の任意で(義務ではない)にせよ、登録あるいは書面による許可を要請するといった措置をとる時点が、1つ1つのブローカー取引の前ではなく、ブローカーとしての活動を始める前になる表現であった。そもそもこの措置自体が義務ではないが、規制内容に関する文言がさらに弱まったと言えた。3月22日草案第10条にも、3月27日草案にも、この表現が残っている

【第11条:流出/迂回(Diversion)】

 3月22日草案には、以前の全ての文書や草案には見られなかった、流出/迂回(Diversion)に関する第14条が、第11条(記録保持)、第12条(報告)等の後に、新たに設けられた。この条項は、今回の会議での非公式協議を通じて作成された。以前の草案の全体に散在していた流出/迂回(diversion)関連の部分をまとめて1つにまとめたという側面が強い。また、義務のレベルが弱い表現(「shall seek to prevent the diversion」、「where feasible」、「to the extent permitted by their national laws」、「are encouraged to」など)が多く挿入されていることもあり、実質的な規制への影響はあまりない条項かもしれない。この14条は、3月27日草案では少し前に移動されて、第12条(記録保持)や第13条(報告)の前の第11条になった。

 3月22日草案第14条(流出/迂回)は、第2条の規制対象のみに適用されることになっており、弾薬、部品・構成部分には適用されなかった。3月27日草案第11条も同様に、弾薬、部品・構成部分には適用されない。

 分析第2弾で解説したように3月27日草案では、流出/迂回のリスク、ジェンダーに基づく暴力、汚職、社会・経済的開発への影響に関する3月22日草案第7条8にあたる項が、まるごと削除されていた。そのうえで、流出/迂回については、3月27日草案第11条2は、第2条に含まれる兵器を輸出する際には、その輸出による流出/迂回のリスクを評価し、そのリスクを低減する措置を設けることを検討する、としている。そして、検討する措置としていくつか例を提示し、そのなかの一つとして、問題となった輸出を許可しないことを挙げている。輸出を許可しないことは義務ではなく、あくまで輸出国である締約国が適切であると判断した時に、輸出を許可しないという措置を検討するというだけのことである。ただし、流出/迂回に関して第11条2で書かれている内容は、3月22日草案の第7条(輸出許可)8で書かれていた内容よりも若干文言が強めであると言える。

【第12条:記録保持】

 7月26日草案では、記録保持と報告が第10条にまとめられていた。3月20日草案、3月22日草案に続き、3月27日草案でも、記録保持と報告が別々の条項に分けられている。

 2011年文書や7月3日文書と同様に、2012年7月24日草案も26日草案も、移転した武器について何を記録するのか(数、モデル・タイプ、輸入国、最終使用者等)を各国が適当に決められる表現になっていた。これは、3月22日草案でも、3月27日草案でも同様である。また、2011年文書は、記録内容の候補として、移転を拒否したケース("denials")も記録することが挙げられていた(8頁B-1)が、7月3日文書、7月24日草案、7月26日草案では、この文言は削除されていた。3月22日草案にも3月27日草案にも、この文言は見られない。
また、7月26日草案では、輸出の記録は義務となっていたが、輸入や通過・積替えの記録に関しては「where feasible」という文言が入っており、義務とは言い難かった。3月22日草案と3月27日でも、輸入や通過・積替えの記録に関して、各締約国は「is encouraged to」(奨励される)という表現であるため、義務ではない

 記録を保持する年数は、2011年文書は最低10年になっており、7月3日文書では最低20年になっていたが、7月24日草案と7月26日草案では最低10年に戻っていた。「コントロール・アームズ」キャンペーンは、武器のライフサイクルを考えれば10年は短すぎるため、最低20年にすべきと主張していた。しかし、日本などは10年とすることを主張し、3月22日草案でも3月27日草案でも最低10年となった

【第13条:報告】

 7月26日草案では、記録保持と報告が第10条にまとめられていた。3月20日草案、3月22日草案に続き、3月27日草案でも、記録保持と報告が別々の条項に分けられている。

 7月26日草案では、弾薬や部品・構成部分の移転について記録し報告する義務はなかった3月22日草案でも3月27日草案でも、そうした義務は一切無い

各国が事務局に提出する報告書について、7月26日草案では「実際の移転(actual transfer)」とされていたが、3月20日草案第11条(報告)第3項では「実際の輸出と輸入(actual export and import)」となっていた。したがって、通過・積替えやブローカリングについては、報告義務は一切なくなった。3月22日草案でも3月27日草案でも、この問題は同様である

 2011年文書は、各国が記録した内容を報告する旨が書かれていたが、7月3日文書、7月24日草案、7月26日草案は、「各国が報告書のなかに何を具体的に記入するのか」(数?モデル・タイプ?輸入国?価格?など)は全く書かれていなかった。よって、具体的にどのようなものを移転したのか曖昧な書き方の報告書にすることも可能であった。3月22日草案でも3月27日草案でも、この問題は同様である

 7月26日草案において、ATTの事務局に報告する報告書に含める情報の種類は、「国連軍備登録制度を含めた、関連の国連の枠組みに提出する情報と同じにしてもよい(may)とされていた(第10条5)。したがって、締約国は、ATTの事務局に報告する内容を、国連軍備登録制度に提出する報告書と同じものにすることも想定しえた。しかし、国連軍備登録制度の報告書に含める情報は非常に大雑把であるため、実際にどのような兵器が移転されたのか把握が難しい3月22日草案でも3月27日草案でも、この問題は同様である

また、7月24日草案では、報告書は公開されることになっていたが、7月26日文書ではその文言が削除されていた。3月22日草案でも3月27日草案でも、この問題は同様である。ただし、上記の国連軍備登録制度では、提出された報告内容が公開されている。したがって、ATTにおいて「公開する」という文言がなくとも、国連軍備登録制度でいずれにせよ公開される、という捉え方もできる。また、ATTの枠組みで各締約国が提出する報告書が、国連軍備登録制度のものと同様の大雑把なものでも良いとされている限りは、条文に「報告書を公開する」旨の文言が入ったとしても、現状と比べて武器移転に関する透明性が向上することは、あまり期待できないかもしれない。加えて、例えば国連軍備登録制度設立時の合意文書には、報告書を公開するとは書かれていないが、実際の運用においては公開されている。したがって、ATTに「報告書を公開する」旨の文言が入らなくとも、後の段階で報告書が公開されることも想定できる。

※ただし、3月22日草案は、「Reports shall be made available and distributed to States Parties by the Secretariat.」であるのに対して、3月27日草案は、「Reports shall be made available, and distributed to States Parties by the Secretariat.」と、availableの後にカンマが入っている。これを根拠にして、「made available」の部分と、「and distributed to States Parties by…」の部分は別であると主張し、公開されることを意味しているのだと議論することは、もしかしたら可能かもしれない。ただし、公開されるという意味であれば、made public やmade publicly availableとするであろうと考えられるため、このカンマを根拠に「公開という意味だ」と主張をすることは難しいのかもしれない。ただし、どちらにせよ、上述のように、国連軍備登録制度をはじめとする近年の制度においては、合意文書に報告書を公開する旨が入っていなくても実際の運用においては公開されているため、ATTでも報告書が公開される可能性は十分に考えられる。

さらに、7月26日草案は、締約国が提出する報告書から、商業的な機密(commercially sensitive)や国家安全保障に関わる情報を除外することができる、としていた(第11条5)。何が機密であるか等は各国の裁量に委ねられるため、どのような情報であれ、「機密である」「安全保障に関わる」ということにして報告しないことも可能になる。3月22日草案でも3月27日草案でも、この問題は同様である

 情報の公開は、過去の移転規制においても大きな問題であった。移転を規制し、移転情報を公開することについては、しばしば透明性確保や信頼醸成といった目的が掲げられる。しかし、武器の調達を輸入に頼る国々の軍備情報のみが公開され、自国内で武器を一定程度以上製造・調達できる国々の軍備情報はあまり公開されないという、不平等な性質を持つことは否定しがたい。また、移転情報の公開は、必ずしも信頼醸成にはつながらず、不信感や軍拡競争につながる(例:隣国が武器を大量に輸入した情報が公開された場合など)といった指摘もある。

【第15条:国際支援】
 7月24日草案と同様に、7月26日草案にも、犠牲者支援の項目はなかった。また、7月24日草案には、ATTの実施のための国内措置の違反に関する捜査や訴追に関する支援が含まれていたが、これは7月26日草案では削除されていたこの問題は、3月22日草案でも3月27日草案でも同様である

 分析第2弾で解説したように3月27日草案では、流出/迂回、ジェンダーに基づく暴力、汚職、社会・経済的開発への影響に関する3月22日草案第7条8にあたる項が、まるごと削除されていた。そのうえで、汚職に関しては、第15条(国際協力)6において、締約国は、第2条に含まれる通常兵器の移転が汚職行為の対象になるのを防ぐべく、各国での措置等をとることを奨励される(are encouraged to)という文言が入っている。あくまで奨励されるのみであり、義務ではない

【第17条:締約国会議】

 7月26日草案は、締約国会議の役割の一つとして、この条約の履行等に関する勧告(recommendations)を検討し採択することを挙げていた。ただし、締約国会議には、条約の履行状況を検討するといった役割は与えられていないため、そうした検討なしに、どのように勧告の作成に至るのかは明らかではなかった。これについて、3月22日草案第17条4(c)には、履行状況を検討する旨が新たに加えられていた。3月27日草案第17条4(a)では、締約国会議の役割として、通常兵器分野での進展(開発)を含めて、この条約の実施を再検討する、という表現になっており、さらに(c)に、第20条に則ってこの条約の改正を検討することが追加されている。

【第18条:事務局】

 7月24日草案およびそれまでの一連の文書では「実施支援ユニット(Implementation Support Unit: ISU)であったが、7月26日文書では「事務局(Secretariat)」という言葉に変えられていた。3月22日草案でも3月27日草案でも、「事務局」とされている。また、この事務局をどこに置くかについては明記されていない。

 7月24日草案およびそれまでの一連の文書や、7月26日草案と同様に、3月22日草案でも3月27日草案でも、事務局には各国の報告書を検証する権限はない
※ ただし、元来ATTは検証制度等になじまない性質があるとも言える。

 以前の記事で指摘したように、3月22日草案の前の3月20日草案第16条(事務局)第3項(事務局の任務)の(e)では、「締約国会議で決定された(as decided by the Conferences of States Parties)」他の義務を果たすとされている。7月26日草案では、この箇所は「この条約によって委任された(as mandated by this Treaty)」他の義務を果たす旨が書かれていた。3月20日草案の文言は、締約国が合意すれば、事務局の役割を拡大することができることを意味する。3月22日草案でも3月27日草案でも、同じ表現が残っている

【第19条:紛争解決】

以前の記事で指摘したように、締約国の任意で解決する紛争について、7月26日草案の「この条約の実施に関する(concerning the implementation of this Treaty)」紛争という表現が、3月22日草案の前の3月20日草案第17条(紛争解決)第3項において、「この条約の解釈と適用に関する紛争(concerning the interpretation or application of this Treaty)」という表現に置き換えられていた。他の条約の類似条項における表現との一貫性等に鑑みた変更かもしれない。3月22日草案でも3月27日草案でも、この表現は置き換えられたままになっている

【第20条:改正】

 7月24日草案では、コンセンサスが無理な場合は出席かつ投票する締約国の3分の2による条約改正が可能となっていた。7月26日草案では、コンセンサス(by consensus)でのみ改正が可能となった。3月22日草案も7月26日草案と同じであった。3月27日草案第20条1では、条約発効から6年後以降にはじめて改正が可能で、その後の改正は締約国会議において3年毎にのみ可能、となっている。そして、第20条4では、改正にはコンセンサスを得ることを目指すが、それが無理な場合は、締約国会議に出席し且つ表決に参加する国々の4分の3の賛成で改正されることになっている。ただし、第20条4に書かれているように、改正をしても、締約国のなかでその改正を受け入れない国には適用されない。

【第21条:署名、批准、受諾、承認又は加入】
 7月24日文書では、国家だけでなく地域統合組織も署名、批准、受諾、承認又は加入が可能になっていたが、7月26日文書からは削除された。2012年7月交渉会議において、EU諸国などは、地域統合組織も署名等が可能にすべきと主張したが、中国は、条約交渉最終日の7月27日(金)までにEUによる対中武器禁輸が解除されないのならば、地域統合組織の署名等には賛成できないと主張した。3月22日草案でも3月27日草案でも、地域統合組織の署名等の文言は削除されたままである。

【第22条:発効条件】
 2011年文書で具体的な批准国数等が書かれていなかった発効条件は、7月3日文書では、65か国による批准等の30日後あるいは30か国による批准等の3年後とされ、7月24日草案では、65か国による批准等の30日後とされ、7月26日草案では、65か国による批准等の90日後になっていた。3月22日草案も、7月26日草案と同じであった。3月27日草案では、50か国と少し数が下がっていた。

【第26条:他の条約との関係】
 7月26日草案第5条2の第2センテンスは、締約国の防衛協力合意(defense cooperation agreements)のもとでの契約義務を無効にするものではない、としていた。この表現は、7月24日草案の第6条2の第2センテンスにも見られた。7月24日草案では、その前の第6条2の第1センテンスの中に「本条約の目標や目的と一貫性がある限り」といった文言があり、インドがこの文言の削除を求めていた。7月26日草案では、「本条約の目標や目的と一貫性がある限り」という文言は削除されており、防衛協力合意に基づく契約義務である限りは、ATTの目標や目的と一貫性がなくても移転が可能と解釈することもできた。7月26日草案の第24条は、締約国は、本条約の義務と矛盾がなく、本条約の目的を損なわない限り、通常兵器の国際貿易に関する合意を結ぶ権利がある、としているが、第5条2との関係は曖昧であった。3月22日草案でも、この問題は残っていた

「防衛協力合意」問題は、3月24日の時点で、アメリカとインドを中心にした国々で、この問題に関する妥協案を検討しているという噂があり、3月27日(水)草案でどうなるかが注目された。

3月27日草案では、この第5条2は削除され、草案後半の第26条に防衛協力に関する文言が見られる。これは、3月22日草案第5条2と第26条(他の国際合意との関係)をまとめたものと言える。そして、3月27日草案第26条(他の国際合意との関係)は、以下のような文言になっている。

Article 26
Relationship with other international agreements
1. The implementation of this Treaty shall not prejudice obligations undertaken by States Parties with regard to existing or future international agreements, to which they are parties, where those obligations are consistent with this Treaty.
2. This Treaty shall not be cited as grounds for voiding defense cooperation agreements concluded between States Parties to this Treaty.

上記の3月27日草案第26条1では、ATTは締約国による既存および将来の国際合意に関する締約国の義務に影響を及ぼすものではない、とされているが、その後に、「そうした義務がこの条約と一貫性がある限り」という文言が入っている。
上記の3月27日草案第26条2は、ATTは、締約国間で(between States Parties to this Treaty)合意された防衛協力合意(defense cooperation agreements)を無効にするものではない、とされている。ここでは、まず、防衛協力合意は締約国間(between)に限定されている。また、防衛協力合意「に基づく契約義務(contractual obligations)」という文言が削除されている。これについては、3月28日現在の会議場周辺では、ATTによって無効にされなくなるのは、締約国間(between)で合意された大枠の防衛協力合意自体であり、そのもとで行われる個別兵器の移転に関する合意についてはATTが優先される、という解釈をする者が多い。この解釈をする場合、若干の解釈の余地が残るかもしれないとはいえ、7月26日草案や3月22日草案に比べて、抜け穴が縮小することになる。

●【その他】
 7月26日草案の第23条では、「締約国は、非締約国に向けた、本条約の規制対象の通常兵器の全ての輸出について、第3条と第4条を適用する」としていた。これは、「本条約の規制対象(第2条)」に含まれない弾薬、部品・構成部について、非締約国向けの輸出であれば、第3条と第4条は適用されないと解釈できた。しかしながら、第6条4では、「弾薬のどのような輸出も、その許可の前に、第3条と第4条1から5を適用する」とされており、矛盾すると考えられた。部品・構成部分(第6条5)についても、同じ矛盾が指摘できた。さらに、「・・・・全ての輸出について、第3条と第4条を適用する」とされていたため、非締約国向けの移転であれば、この条約の輸入規制、ブローカリング(仲介)規制、通過・積替え規制は適用されないという解釈もありえた。以前の記事で指摘したように、3月22日草案の前の3月20日草案の段階で、この条項は削除されていた。3月22日草案にも3月27日草案にも、こうした条項は見られない

以上。

(作成者:夏木碧 「武器と市民社会」研究会事務局担当。2003年より、国際NGOオックスファムにて人道/軍備管理・軍縮分野を担当。ATT関連の調査・研究や国内・国際会議の企画・調整等を行う。)

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