「武器と市民社会」研究会

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武器貿易条約(ATT)交渉会議:3日目から5日目の状況

3月18日から28日まで、ニューヨークの国連本部で武器貿易条約(ATT)交渉会議が開催されています。
このブログ記事作成者のツイッター・アカウントでは、会議の状況などを随時つぶやいております。

 前回の記事掲載後、会議3日目の3月20日(水)夕方には、議長の非公式な草案文書が配布されました。その夜は11時前後まで、NGOの国際法・政策チーム関係者で集まり、新しい文書を一文づつ検証しました。ただし、新しい文書の規制内容自体は、7月26日草案からほとんど変わらず、条約としての体裁を整えるような細かい修正が加わったのみでした。したがって、7月26日草案に関する分析記事(その1その2その3)に述べた指摘のほとんど全ては、3月20日の文書についてもあてはまることになります。

今回も詳細な分析記事を書こうかと思っておりましたが、規制内容自体はほぼ変わりないですので、当面はScribdにアップロードするだけにいたしました。

【3月24日追記】3月20日の草案文書(以下、3月20日草案)について、あえて変化を指摘するとすれば、以下のようなものを挙げることができます。
1)「原則」で国際人道法と国際人権法を尊重する旨がかかれている部分に、「国連憲章、世界人権宣言、ジュネーブ条約に則って(in accordance with the Charter of the United Nations, the Universal Declaration on Human Rights and the Geneva Conventions)」という文言が入っている。他の国際人道法や国際人権法には言及していないため、限定的な意味を持つことになる。ただし、「原則」の部分であるため、実質的な影響はないかもしれない。
2) 7月26日草案の第5条(実施)を前に移動させて、第3条にしている。
3)第4条(移転の禁止)の後の第5条(輸出の評価)の冒頭に、「その輸出が第4条で禁止されない場合(If the export is not prohibited under Article 4)」という表現が入っており、第4条と第5条の関係を明確にしている。
4)第6条(輸出)第5項の弾薬輸出規制において、「ammunition」という言葉が「ammunition/munitions」に置き換えられている。
5)第7条(輸入)第2項の、各締約国が任意で行う輸入規制について、「輸入国の管轄下の輸入(imports under its jurisdiction)」という表現が挿入されている。こうした表現は日本などが主張していた。日本にある米軍基地向けの輸入といったケースについて、明確に規制対象外にするためかもしれない。
6)第8条(通過・積替え)第1項に、「管轄下の(under its jurisdiction)」「国際法に則って(in accordance with international law)」といった文言が挿入されている。とりわけ後者の文言は日本が主張していた。国際海洋法上の無害通航権(外国船舶が、沿岸国の平和・秩序・安全を害さないかぎり、その沿岸国の領海を自由に通航できる権利)を想定していると思われる。
7)第9条(ブローカリング)の「ブローカー取引に携わる前に(before engaging in brokering transactions)」という表現が「ブローカリングに携わる前に(before engaging in brokering)」という表現に代わっている。締約国の任意で(義務ではない)、登録あるいは書面による許可を要請するといった措置をとる時点が、1つ1つのブローカー取引の前ではなく、ブローカーとしての活動を始める前になる表現である。そもそもこの規制自体が義務ではないにせよ、規制内容に関する文言が弱まったと言える。
8)第11条(報告)第3項では、各国が事務局に提出する報告書について、7月26日草案では「実際の移転(actual transfer」とされていたが、3月20日草案では「実際の輸出と輸入(actual export and import)」となっている。したがって、通過・積替えやブローカリングについては、報告義務は一切なくなった。
9)第16条(事務局)第3項(事務局の任務)の(e)では、「締約国会議で決定された(as decided by the Conferences of States Parties)」他の義務を果たすとされている。7月26日草案では、この箇所は「この条約によって委任された(as mandated by this Treaty)」他の義務を果たす旨が書かれていた。3月20日草案では、締約国が合意すれば、事務局の役割を拡大することができることになる。
10)第17条(紛争解決)第3項において、締約国の任意で解決する紛争について、「この条約の実施に関する(concerning the implementation of this Treaty)」紛争という表現(7月26日草案)が、「この条約の解釈と適用に関する紛争(concerning the interpretation or application of this Treaty)」という表現に置き換えられている。他の条約の類似条項における表現との一貫性等に鑑みた変更かもしれない。
11)7月26日草案の第23条(非締約国との関係)が削除されている。これについては、他の条項との矛盾や抜け穴を生むものであった(詳しくは、7月26日草案の分析記事その3を参照ください)。3月20日草案でこの問題が解決されたと言える。

 翌3月21日(木)と22日(金)の本会議や非公式協議では、この3月20日草案をもとに議論が行われました。3月20日草案における規制内容は、7月26日草案の規制内容と実質的にはほとんど変わらないため、7月26日草案に関する意見と同様の意見がみられました。

 3月22日(金)の午後の本会議はなく、非公式の様々な協議が行われた後の午後7時半すぎに、議長の非公式な条約草案文書の第2弾(以下、3月22日草案)が配布されました。この3月22日草案も、Scribdにアップロードしました。

 これから週末にかけて、NGOの国際法・政策チームを中心に、3月22日草案を細かく分析することになります。前回の3月20日草案に比べれば変化があるように思いますので、分析後にブログに記事を掲載しようと思っております。

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