「武器と市民社会」研究会

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武器貿易条約(ATT)交渉会議:初日・2日目の状況

3月18日から28日まで、ニューヨークの国連本部で武器貿易条約(ATT)交渉会議が開催されています。
このブログ記事作成者のツイッター・アカウントでは、会議の状況などを随時つぶやいております。

 2012年7月ATT交渉会議の開始を2日間近く遅らせたパレスチナ等の参加問題(詳しくはこちら)が、今回は短時間で合意に至ることで、会議初日の3月18日(月)の本会議はスムーズに進み、午後5時前後には各国の一般発言が終わりました。その後、本会議では、2012年7月のATT交渉会議終盤の7月26日に提示された条約草案(以下、7月26日草案)の前文(preamble)、原則(principles)、目標・目的(goals and objectives)に関しての議論が行われました。なお、7月26日草案のこれらセクションに関しての解説はこちらでご覧いただけます

 2日目の3月19日(火)の午前の本会議では、前日に続いて7月26日草案の前文、原則、目標・目的について議論された後、条約の規制対象(Scope)、移転禁止(Prohibitions)と許可基準(Criteria)についての議論が続きました。多くの国が発言を希望したため、午後の本会議でも、規制対象、移転禁止、許可基準に関する議論が続きました。したがって、本来は午後に予定されていた、実施に関する議論は、この日は行われませんでした。なお、7月26日草案の規制対象に関しての解説はこちら、移転禁止や許可基準に関する解説はこちら、実施に関する解説はこちらでご覧いただけます。

 交渉会議においては、上記の本会議の他に、様々な非公式協議の場が設けられています。最初の2日間の本会議において、ATT推進諸国からは強い規制を求める発言がみられました。しかし、非公式協議の場では、推進派の国々はおとなしくなってしまい、逆に、ATT消極派・反対派の勢いが強まっているようです。

また、ATT推進派の国々も一枚岩ではなく、2012年7月交渉会議の際と同様に(詳しくはこちらをご覧ください)、大きく分けて2つに分かれています。

1)積極推進派
メキシコノルウェーニュージーランドトリニダード・トバゴを中心とするカリブ地域の国々、ナイジェリアを中心とする西アフリカおよびその他のアフリカの国々。このグループは、7月26日草案の抜け穴を塞いだ厳格な内容のATTを求めています。

2)妥協派
イギリスフランスフィンランド日本アルゼンチンなど。このグループは、厳格な内容のATTが望ましいとしつつも、アメリカ中国インド等に妥協し、これらの国々の要求を盛り込んだ妥協案に合意することを支持する傾向にあります。もちろん、会議の最初から「妥協すべき」「このくらいで良い」等と声高に主張することはしませんが、会議終盤でこれらの国々がどのように行動するかが注目されます。

日本の一部メディアでは、ATTにアメリカ中国ロシアが反対しているという報道が見られますが、これらの国々はATTの形成自体には反対していません。また、2012年7月ATT交渉会議の最終日に、中国アメリカ等に同調して交渉が決裂したという報道も見られますが、中国は同調せず、むしろ譲歩するような発言をしていました(7月交渉会議最終日の様子はこちらをご覧ください)。2012年の国連総会におけるATT決議(今回の会議の開催を決定した決議)にも、中国は賛成しています。アメリカ中国インドなどは、ATTの形成自体に強く反対してはいないものの、条約を弱める方向に向かわせるような要求が比較的多い国々、と言えます。

上記2)の妥協派の国々は、このようなアメリカ中国インドなどを取り込むことで、イランエジプトキューバシリア朝鮮民主主義人民共和国などの強硬反対派の国々を抑え、なんとかコンセンサスでの条約採択を狙っていると言うことができます。ただし、国連での会議における条約の「コンセンサス採択」とは、全ての国連加盟国がその条約に拘束されることを意味しません。コンセンサスでの採択とは、どの国も採択時に反対をしない(条約採択を黙認する)ということであり、実際に条約に拘束されるためには、各国が署名し批准する必要があります。
ですので、もしアメリカ中国インドなどの国々の要求をのんだ条約が採択されたとしても、これらの国々が条約に署名・批准するかどうかという問題は残ります。


現在、会議3日目の3月20日(水)夕方です。今日の本会議でも7月26日草案に関する議論が続いていましたが、あと少しで議長の新文書が提示される見込みです。今日の文書は、7月26日草案から内容的にそんなに大きくは変わらず、国際法的な細かい修正が加わるのみではないかという噂もあります。

(作成者:夏木碧 「武器と市民社会」研究会事務局担当。2003年より、国際NGOオックスファムにて人道/軍備管理・軍縮分野を担当。ATT関連の調査・研究や国内・国際会議の企画・調整等を行う。)

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